内容説明
神父や修導士の厳しい監督のもと、社会から完全に隔離した集団生活――修道院とは名ばかりの教護施設で、混血児イグナシオは友人を事故に見せかけて殺害した。修道女・文子は偶然現場を目撃するが、沈黙することを約束する。“人を裁けるのは、神だけです。”静謐に言い放つ文子にイグナシオは強く女性を意識し、施設を脱走する最後の晩、初めて文子と結ばれる。そして、己の居場所を探して彷徨い新宿歌舞伎町で新たな生活を始めるが……。芥川賞受賞作と対をなす記念碑的名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
84
もうホントギッラギラしていて且つ、生々しくそして破滅的。ノックアウトされた読者の方も多いのではないかと思いました。本書はエロと暴力の間に在る哲学のようなものを描き出したという点で萬月さんらしいと思いました。2022/12/08
ミカママ
72
これも約20年ぶりの再読。相変わらず文章が荒削り、というか「作文を書くときにはこういうことに気をつけましょう」という悪いお手本みたいな・・・。主人公のイグナシオの人生があまりに哀しい。エロな描写に慣れている(そして大好き)な私にも、イグナシオと茜、そして文子との性描写には胸の震えるものがありました。これでまたしばらく花村さんは封印。2015/04/18
まさきち
55
殺人と性交の瞬間にのみ自らの存在を確かめ、歓びを味わうイグナシオ。しかしその沸き起こり方があまりにも突拍子がなく、暴力的で圧倒されました。2023/01/26
i-miya
54
2014.02.14(01/27)(つづき)花村萬月著。 02/13 (P016) 神父。 こめかみを指圧する。 蛙のように痙攣していたとすると、もう絶望だったに違いない。 従軍していたときにまるで踊るように痙攣する兵士を幾度か見てきた。 兵士は例外なく死んでいった。 痙攣する死体は生きているように見えるものだ。 園長にどう報告するか。 園長は、事実よりも評判を気にする男だ、老人だ。 イグナシオは自分の演技力に酔った。 2014/02/14
i-miya
49
2014.01.02(12/27)(つづき)花村萬月著。 01/02 (p005) (プロローグ) 新学期で中学二年になるイグナシオが洗礼を受けようと思ったのは施設の中では、そうすることが便利がいい、都合がいい、と思ったためであった。 キリスト教修道会の経営。 S47.04.02、復活祭、イ-スター。 二月下旬には連合赤軍事件が起きていた。 イグナシオは、公教要理の最後の勉強をしていた。 イグナシオは唾を呑み込んだ。 2014/01/02