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内容説明
十九世紀後半以降、アメリカへ流入するさまざまな民族や宗教から自らを差別化していった〈最古のアメリカ人〉たちは、自らの誇りをどう保ってきたのか。文化多元主義が主流となりゆくなか、ワスプはユダヤ系やカトリック、有色人種らに権益を分かつ一方で、ワスプ右派からの圧力にも対処しなければならなかった。本書は、四面楚歌の状況のなかでのワスプの生活と心理を探り、彼らの行動の哲学は何なのかを分析する試みである。
目次
第1章 ワスプとは何者か?
第2章 ワスプ最後の降盛期1920年代
第3章 女王である母が君臨するワスプ家庭
第4章 後継者養成のカリキュラム
第5章 ワスプ男性の支配力の源泉、クラブ
第6章 ブッシュは監督派の大統領の十一代目
第7章 病めるワスプ
第8章 改革されたワスプ文化、その現状と未来
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
59
奇しくも『現代アメリカを観る』と同年の出版。そこは名著『エスニック・アメリカ』の著者だけあって、WASPに対してぐっと深い掘り下げをしている。重要なのはプロテスタントであることで、例えばアイルランド系のニクソンやレーガンもプロテスタント故にWASPに準じるとのこと。主に上流の者の生活や文化、思考や悩みなどを、映画(「普通の人々」など)や小説などの分析を含めて解読、さらに非WASPのWASPを目指したりする動きや、思考パターンの違いなどにも触れられている。少し古い本だが現代アメリカを理解するには良い本だ。2022/02/20
OjohmbonX
6
WASP:イギリス系プロテスタントが主流だったアメリカで、1860年代くらいから非WASPの流入が増えたのに対抗して反ユダヤ・反カトリックが始まって、1920年代あたりに差別のピークを迎えて、60年代にカトリック初の大統領ケネディが誕生した付近で収束する(というか今度は非白人が増大したのでユダヤ・カトリックを取り込んだ)という話で、そのあたりのWASP保護・非WASP差別文化を見せてくれる。白人至上主義のオルトライトが最近目立ってるけど、ちょうど100年前の差別の様相を見てみれば見通しもいいかなと思って。2017/02/25
FreakyRider
3
合衆国のバックボーンの知識。建国時からルーズベルトまで国を牽引したワスプの、エリート層の実態を掴む。国際的なアメリカの力の歴史とは別に進む、力を持ったマジョリティーが新参者から実権を奪われていく過程が描かれる。黒人などの人種が違うマイノリティーの増大に対して、白人の中でも後参者のユダヤ系やイタリア系の取り込みを急いだワスプの歴史の末に現れたのが、アイリッシュ系のJFKだったらしい。この動きの末、ノブレスオブリージュの精神から公民権運動に身を投じたワスプの良心の発露ともいうべき動きが現れる。2012/11/22
Rei
2
WASP家庭において、子供がリトルリーグでホームランを打って「お母さん、僕ホームラン打ったよ!」と喜んで報告すると 諭すような冷たい眼差しと、少しの間のあとに「あなたの成果だけを聞いているのではないの、チームは勝利したの?」と子供に聞くという話を、ホワイトエスニックやユダヤ系の人が聞いて「なんて、ひどい母親だ。子供が成果をあげたのに!」という感想を持つ話が印象的だった。
hikarunoir
1
白人女を崇める欺瞞、精神性や非WASP白人との相克等が解説されるが、「グラン・トリノ」は紆余曲折の先を示唆したと終章で痛感。2014/04/21