- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
『夫の宿題』という本をご存知だろうか。平成8年に亡くなった遠藤周作氏の妻、順子夫人がその結婚生活、そして共に遠藤氏の病魔と闘った生活について語った手記であり、今多くの読者の注目を集めている。では当の遠藤周作氏は、その晩年、いかなる心境にあったのだろうか。 本書は自らの身辺雑記から、日々のニュースに対する所感まで、好奇心の強い著者らしく、幅広い話題の詰まったエッセイ集である。 たとえば、美味い蕎麦屋を見つけたかと思えば、家族に嫌がられながらも奇妙な鳥を飼ってみる。正月のテレビのくだらなさには怒りを抑え切れず、日本の教育制度にも一言あり。 さらに、老いを迎える覚悟、死生観、信仰心についても語る。今思えば、自らの死を迎える清冽な覚悟がそこにあったといえる。しかし、闘病生活の暗さはみじんも感じさせず、ユーモア溢れる狐狸庵節が冴え渡っている。著者の人柄がつくづくしのばれる、ファン必読の一冊である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rokubrain
7
晩年のエッセイ集。 期待を裏切らぬ内容。 「もの思う」先生の思索している過程がよく見える。 なかでも「守護の天使」は先生の考え方の原点がよく表われている。 人間、合理主義だけで生きるのではない、自分に起きた「偶然」をどうとらえるか? 人生と生活、この2つのことばに先生の考えは凝縮されている。 仕事や名声や社会的地位は人生ではなく、生活の領域であると。 直線で生きるだけでない、立体の部分を考えることで人の生き方は随分違ってくるだろう、と。 思索が及ぼす「偶然」が人生なのかもしれない。2018/08/05
Hamu
6
遠藤の晩年の作品とされてる本書。今日から見れば、遺伝子療法等「最先端治療」という一般にも開示された可視的変化もある中、「生活」でなく「人生」という問に対する提言が、キリスト教徒、またそれ以外の側面からの遠藤という当時の人の経験と知見を基に、家族、社会、政治、歴史、文化、果てはイエスというのトピックと共に書かれていて興味深い。「知識だけの知識にすぎぬ」という教師批判、アーレンドに見られるような、本当に国民に責任はなかったかと問う「生贄の仔羊」等、今も読む価値のある内容が多い。特に『沈黙』との併読がオススメ。2017/05/01
ワッツ
4
遠周最晩年の随筆。高校以来の再読。題名に狐狸庵がついているが、マンボウと共に一世を風靡した頃の、ぐうたらもののようなユーモアエッセイではなく、深さと広がりのある内容である。連載開始の文章が秀逸。心の広い大作家の風格が漂ってきて実に頼もしい。政治的問題にも鋭く突っ込んでいるが、総じて二十年以上前の随筆とは思えない程、未だに日本全体の問題となっている内容が多く、当時既に遠周がここまで考えていたことに驚く。しかも連載開始して間もなく不治の病が発覚したのに。改めて、遠周の職業作家としての誇りを感じた。2017/03/15
ハメ・ドゥースト
1
☆☆☆2012/12/14
books
1
10年ほど前に上司に勧められ、読んでいなかった本を久しぶりに読んでみた。当時、すぐに読んでおけばよかったと感じた。最近読んだ本の中では、オススメの1冊。2011/04/28




