文春文庫<br> 時雨の記

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文春文庫
時雨の記

  • 著者名:中里恒子
  • 価格 ¥559(本体¥509)
  • 文藝春秋(2016/05発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167273040
  • NDC分類:913.6

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内容説明

夫と死別して一人けなげに生きる多江と、実業家の壬生。四十代の女性と五十代の男の恋は、知人の子息の結婚式で二十年ぶりに再会したことから始まった。はじめて自分の本音を話せる相手を見つけた男と、それを受け止めてなお甘えられる男に惹かれて行く女。人生の秋のさなかで生涯に一度の至純の愛にめぐり逢った二人を描き、人の幸せとは、人を愛するよろこびとは、を問う香り高い長篇小説。雅びな恋愛小説を数多く遺した中里恒子の作家案内と自筆年譜付き。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ミカママ

167
ええええ、エッチは?!エッチは?!と読みながらその箇所を探してしまったことは、ナイショ・・・はさておき、初老(当時は今よりもさらにその感覚強いと思われ)のふたりの恋愛物語。全体にただよう静寂さと花の香りがたまりません。壬生の男らしさ、そして弱さ、それを支える多江のたくましさ。解説の古屋さんの言葉「多江が理想の女なのは、彼の言葉が多江には通じるからである。本音を吐くことができる相手をみつけたのである」そういうオンナに私はなりたい。2016/02/20

新地学@児童書病発動中

109
以前カウンセリングのボランティアを熱心にやっていた。その前に研修を受けて、先生に言われたことが今でも印象に残っている。人間が生きていく上で一番心の支えになるのは、自分の気持ちを理解してもらうことだ。繰り返し先生はこう言われた。この物語を読みながら、カウンセリングの先生の言葉を何度も思い出した。壬生と多江が深く愛し合うようになるのは、自分の気持ちを本当に分かってくれる相手にめぐり会えたからだろう。悲しいことだが、家族がいても自分の気持ちを分かってもらえるとは限らない。そんな孤独を抱えて私達は生きている。→2017/11/12

優希

88
馨しい香りが物語から立ちこめていました。初老の2人の恋愛小説。生涯に一度とも言える至上の恋に落ちる壬生と多江。肉体関係に陥らなかったことで生々しさがなく、純粋に愛する幸せを感じることができました。男女の 関係では恋だけれど、お互い人間として深く愛し合っていたことが伝わってきます。お互いの想いが込められたあたたかみのある手紙も素敵でした。静かで揺るぎない愛があり、時雨のあとの濡れた大地のように愛の形が残っている。綺麗な言葉で紡がれた世界に酔いました。2016/03/03

naoっぴ

76
心地よい男女の会話文で彩られた妻子ある男と未亡人の大人の恋。なんともプラトニックで節度ある関係。 とても美しいけれど、壬生の明るさや強引なまでのリードに女性が求める理想の男性像はこれだというのがことさらに感じられ、恋をし始めた女性のあばたもえくぼ的な心理を描いているのかなという気もした。どうにも御簾越しで読むような感覚だったのは、恋の始まりの美しい部分のみが強調されていたからかな。時代の違いもあるのかもしれないけど、これがおとぎ話のように思えた自分がちょっと嫌になりつつ読了。笑2018/06/17

いつでも母さん

48
読友さんお薦めの1冊。不倫の物語なのだが、この二人の心に寄り添ってしまう。そう、そうなの。こう云う大人の情愛が堪りませんでした。切ない結末ではあったが、哀しくはない読後感。『やっぱり死ななければ地上では一緒に暮らせない人』壬生が、多江に宛てた手紙も情を掻き立てる。そして、多江にはここが『お墓』とした処での弔詞に、これからも壬生と共に有ると云う気持ちが私の胸に染みた。ちっとも古さを感じさせない、逆に引き立たせている文体で中里作家に参りました。しばらくは余韻に浸っていたい。2015/06/08

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