内容説明
自然の風土の中で生きる人間をとおして作られるのが真実の歴史であるとする安吾独得の歴史観を背景に、自ら現地に足を運び、卓抜した洞察力を働かせてものした歴史紀行の中から「天草四郎」「安吾・伊勢神宮にゆく」「飛騨・高山の抹殺」など10篇を収録。司馬遼太郎の「街道をゆく」や松本清張の「古代探究」などの紀行文学のさきがけとなった画期的エッセイ。
目次
天草四郎
直江山城守
勝夢酔
安吾・伊勢神宮にゆく
飛鳥の幻
長崎チャンポン
飛騨・高山の抹殺
高麗神社の祭の笛
高千穂に冬雨ふれり
富山の薬と越後の毒消し
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
amanon
1
著者の才能の多彩さ改めて驚かされ、また感服させられた。解説でも述べられている通り、著者のタンテイという立場から述べられた歴史観は、確かに学術的な視点からすれば、噴飯物と断ずる他はない箇所もあるのだろうが、それでも従来の歴史観とは違った視点を与えるという事実は否定できまい。これもやはり解説で述べられているが、有史以前から日本と朝鮮半島との間に行き来があり、その時点ではまだ日本人という民族は存在していなかったという説には少なからず共感を覚えた。このような歴史観が充分な発展を遂げることができなかったのは惜しい。2014/01/21
shosho
1
日本各地を訪れて、大胆な発想で歴史の謎を考える内容。歴史をもっと勉強していればより楽しめたと思う。一生涯ガキ大将の勝夢酔と、越後の毒消し売りは特に印象的だった。2013/12/15
franny
1
某掲示板のオカ板で有名なリョウメンスクナの縁起の話記紀に隠された秘密を大胆に推理しますがこういった観点は研究家の人たちはうらやましいのではないかと思います。思考の大きな飛躍というか。どの作家も持てる知識は私などと比べれば半端ないのですが坂口安吾はそのなかでも広範囲に知識をもつ、ような気がいたします。高麗神社は近所なので本を持ちながら今度同じ道をたどってみようかと思います。紀行文の楽しみは本を持って現地に行くこと、これに尽きる、のが持論です。2012/05/07
tokko
1
安吾の視点で解釈した歴史的人物にまつわるエッセイ『安吾史譚』の中では「勝夢酔」が印象的だ。こんな破天荒な人が実在したら楽しそう(身近にいたら大変だけど)。『新日本風土記』など最晩年の作品も収められているが、本当に精力的によく日本各地を旅してまわっていたのだと驚かされる。2011/01/18
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