内容説明
清冽な抒情と透明な詩心を持つ新進女流詩人として出発。昭和61年『ミモザの林を』で野間文芸新人賞、次いで平成4年評伝『画家小出楢重の肖像』で平林たい子賞受賞。人生の機微を深く鮮やかに彫り彩る独自の散文世界を構築、『淀川にちかい町から』で芸術選奨文部大臣賞・紫式部文学賞両賞受賞。こころ暖かく、こころ鎮まる、爽やかな散文の小説世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三平
11
芸術選奨文部大臣賞、紫式部文学賞を受賞した短編集。著者の出身地である大阪市旭区を舞台に普通の人々の流れゆく日々を描いている。人生を重ねていくとふとした時に何故か思い出すような、生活の中の些細でつまらないことを丹念に書き、小説世界の空気感まで感じられる豊かな作品となっている。うどん屋の女店主を主人公にした『おたふく』では寒い日に食べる大阪の「おうどん」の器の温かさ、喉の奥に沁み込む昆布がきいた優しいおだしの滋味が実際味わった時のように感じられる。それぞれ読んだ後にグッと足跡を残されたような余韻が残る良作。2015/09/08
ソングライン
8
戦後10年、大阪淀川沿いの街の景色とそこで暮らす人々の日常生活を淡々と描いていく短編集。そこには日々の生活に追われ夢かなう事なく亡くなっていく人々の哀しみが多く語られます。当時小学1年生だった主人公の一人鶴子がみた皆が生きるのに必死であった世界と40年後の現在との隔世感、そして変わらす存在する淀川に哀愁を感じてしまうのです。2024/05/30
AR読書記録
6
なんかすごく「わかる、わかる...!」という気になったのは、お腹の弱い女の子の苦しさ(と過ぎた後のけろっとした様子)が描かれている場面。やっぱりブンガクというのは、世界の、人間の、人生(その他諸々)の、あらゆる相、瞬間、感情(その他諸々)を捕らまえ言葉で定着させるというものだ(でもある)と思うのだけれど、そこに自分が捕らまえ損ねていた、言葉で表せなかったものを見つけたときの意味はすごく大きい(というのを腹痛に感じたあたりちょっとあれですが)。また、まだ見つけていないものを示唆されることも。ここにある深み。2016/05/24
ミメイ
5
☆5/1編読むごとに、唸ってしまう。平易な言葉で(会話は関西弁)綴られていて読みやすいけれど、その文章は隅々まで神経が行き届いていて、破綻がない。どこにでもいる人々を描いていながら、深い余韻と味わいがある。こういう「まっとう」な小説を久しぶりに読んだ気がする。文芸文庫に入れるのも良いけれど、でも本当はこういう本こそもっと一般的に読まれるべきだと思う。2009/03/06
イリエ
4
ラジオ文芸にて「おたふく」聴了。うどんが食べたくなる。はじめての岩阪作品だったが、良作だった。2015/02/16
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