内容説明
明治34年、19歳の小林慶太(のちの五島慶太)は、大望を抱いて上京した。苦学の末、農商務省の官吏となり、事業家への足がかりをつかむ。持ち前の強引さで、デパート、ホテル、観光業と、次々に事業を伸ばしていった。そして、西武コンツェルンの総帥・堤康次郎との鎬を削る企業戦争が展開した……。〃強盗慶太〃と仇名され、東急を一代で築き上げた男の生き様。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まつうら
24
東急グループ創業者の一代記。強盗慶太と揶揄されるが、若いときから肝が据わっている様子はかっこいい。東大法科に在籍中の加藤高明との問答で、自分を利するために仕事の手を抜くなんてのは、自分が良しとするところではない。バカ正直世で渡りが下手と言われるなら、自分はバカでいいと言い放つ。矢野恒太から東急の社長就任を要請されたときも、小林一三の真似をしてきただけなので、小林を超えたら社長になるという。なかなか言うじゃないか! 本作はこんなかっこいい五島慶太がいっぱいで、著者のオマージュを感じる作品だ。2022/02/03
エツロー
0
東急の創業者・五島慶太の生涯を描いた作品。ただの事実の羅列ではなく、小説として読めるのが面白かった。鉄道省の総務課長にまで出世しながら、「実業界の方がやりがいがある」と経営者に転じる決断ができるのは凄いと思った。「強盗慶太」と揶揄される辣腕ぶりも描かれているが、彼の凄さは、買収した会社をきちんと立て直したことだろう。阪急の小林一三や西武の堤康次郎との関わり合いも面白い。実業家として成功する一方で、大学受験に失敗したり、妻や次男に若くして先立たれたりと苦労もしている。非常に波乱に富んだ人生で読み応えがあった2020/09/30