内容説明
戦後まもなく、アイチ自動車が突然の経営危機に――。「乏しきを分かつ」を信条にしてきた温情社長・愛知佐一郎は、苛酷な人員整理を前に苦悩する。メインバンクたる都銀の冷酷なあしらい。労使の激しい対立。そんな絶望的な状況下に、意外にも日銀による援助の手が。そして運命を握る一人の女……。企業の怨念と十五年目の復讐をドラマチックに描いた渾身の経済小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんらんしゃ🎡
44
『陸王』や半沢好きなら絶対に楽しめること請合おう。戦後の40年間、融資を巡ってトヨタ・日銀連合vs住友銀行、さらに組合との団交。トヨタのもっとも苦しい時期だ。これらは事実に基づいているため、敵役とて当然モデルがいる。悪しざまには書けなさそうだがそこに容赦はない。池井戸作品に劣らず熱く、もちろん倍返しもちゃんとある。愛知県人の執念深さを思い知れ!(笑)2020/11/22
まつうら
24
300ページの中にいろいろなトピックが凝縮されていて、とても読みごたえがある。アイチと住井の確執はどういう経緯なのか? 国産自動車なんて要らないと言っていた池田総裁が、なぜトヨタを救ったのか? でも一番興味深いのは、日銀名古屋支店長の山梨だ。池田総裁のオンナを握ることで優位に立ち、アイチ自動車救済の具申を通そうと迫る。ちょっとヤバいやり方だが、山梨は清廉で私欲がないのでギリギリセーフだ。TBSドラマ「LEADERS」では変更されていたが、原作のまま、香川照之が中村橋之助に迫っていたら絶対にアウトだと思う。2021/09/30
たー
24
戦後混乱期のトヨタ再建の実話に基づく小説。少し前にドラマ化されていたものの原作。一つでも歯車がずれていたらトヨタもこの時点で消滅していたのかもしれないのだなぁ…会社経営は難しい。2014/10/05
izumi
22
戦後日本の経済状況が分かりやすく描かれており、勉強になりました。嫌な銀行員に対して、15年越しの仕返しをするところは、溜飲が下がりました。結局、戦争特需で助かるところは、実話なので仕方ないですかね。池井戸潤好きな自分はつい、技術者たちが力を合わせ、素晴らしい車を造りだして・・・といった物語を期待してしまいます。あと、社長はいい人なんでしょうけど、あまり役にたっていない気がしました。泣くか、こめかみを揉むか、酒を飲む位しかしていないような。辛口な感想を書きましたが、面白かったです。2014/10/26
やっち
10
スペシャルドラマ「リーダーズ」がとても面白いドラマだったので原作本の本書を購入。ドラマで描かれた銀行融資と労働組合闘争の部分が描かれている。特に終章は融資を拒んだ銀行に対して愛知自動車社長がバッサリと成敗してくれて気持ち良い。小説とはいえほぼ実話の物語であり、昭和版池井戸潤の様相。一気読み間違いなしです。2020/08/15