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内容説明
「あたしは,何よりもまず人間よ」ノーラは夫にそう言いおいて家を出る.ノルウェーの戯曲家イプセン(1828-1906)は,この愛と結婚についての物語のなかで,自分自身が何者なのかをまず確かめるのが人間の務めではないか,と問いかける.清新な台詞と緻密な舞台構成がノルウェー語原典からの新訳でいきいきと再現される.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よむよし
116
夫のためだったとはいえ軽はずみな借金事件を起こしてしまった妻。夫がそれを知った時自分の社会的信用が落ちることしか頭にないことを妻は感じた。それまで気付かなかった夫婦間の大きな問題を妻は知ることに。妻をただ可愛がるだけで愛してもないし真摯に向き合おうとしない夫。名高いラストシーンで夫の偽善的な生き方と自分の過去の空しさに絶望し別離を宣言する。思いとどまらせようとする夫との話はかみ合わないまま出ていくことに。それは、より強い、より深い絆を求め行く旅への出発だったのでしょう。話の続きは読者自身が描くのかな。2024/03/17
ヴェネツィア
108
この作品は思想史的に見るならば、意義があることは了解できる。家庭の中で、夫から人形のように庇護されてきた主人公のノラが事件をきっかけに覚醒し、自らのアイデンティティを求めようとするのだから。しかも、それは一人ノラだけの問題ではなく「幾千万の女はそれ(愛する者のために名誉を犠牲にすること)をしています」と彼女が夫に語るように、すべての女性の問題でもあったことをイプセンは宣言させている。ただ、ドラマトゥルギーという観点からするならば、葛藤の解決が唐突に過ぎるし、また主体性の持ち方も弱いと言わざるを得ない。2013/01/24
やいっち
79
若い頃、好きな小説は繰り返し読んだ。長編もだが、短編はなおのこと。モーパッサン「脂肪の塊」、ドストエフスキー「白夜」、チェーホフ「桜の園」、ゴーゴリ「外套」、カフカ「変身」、川端康成「雪国」……。本作も二十代半ばまでに何度 読んだことやら。何故にあんなに惹かれたのか分からない。今 読み返したらどうかな。改めて感心するか、それとも失望するか。確かめるのが怖いような気がする。
zero1
70
男女同権に敏感な人でなくても読んでいる、世界的に知られた戯曲。普遍的なテーマだから今でも読み継がれている。ノラ(翻訳によってはノーラ)は夫が銀行の頭取になることで浮かれていた。でも、彼女には夫に知られたくない秘密が・・・夫婦の間は、微妙なバランスの上に成り立っている。だから世の夫たちは退職とともに離婚を切り出されてオロオロする。あなたの家は大丈夫?彼女はこの後、どうなるのだろう?何らかの方法で生き残れば「女性の自立」は達成されたことになる。作品自体が彼女の自立を表現しているわけではない。問題はその後だ。2018/10/30
みっぴー
57
世間知らずな妻が、世界を知るために夫と子供を捨てて家出…発表時は相当の反響があったのは、想像に難くないです。衣食住保証され、人形のまま生きるのも悪くはないと思うのですが。家の中を切り盛りするのも立派な仕事、外に出て働くのも立派な仕事、仕事に尊卑はありません。ノラの行動は現実逃避にも思えて、嫌悪感を感じました。自分がどれだけ恵まれていたかを思い知って、結局家に戻ってくる予感がします。2016/10/24
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