内容説明
臨床医の宿命とはいえ、今までに多くの患者さんの死を看とった。静かな死、凄惨をきわめた死、子供の死、若人の死、母親の死、自らの命を絶った死、友人の死、そして肉親の死等々。いつも、虚ろな空間だけが残り、医者にならなかったら、こんな悲しい場面に立ち会わなくてすんだのにと思う(あとがき)。心に残る患者さん達との出会いと別れ、医者の胸の内をホンネで語ったエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
友蔵
16
生き方が人の数だけあれば、その終わり方も十人十色。私も折り返し地点を超えたなとこの頃思うけど、どんな最後になるんだろうという思いかふと過ぎった。穏やかにと思えど、こればかりはどうしようもない(笑)2018/08/09
とも
6
医師によるエッセイ。若い少女が白血病で亡くなる話から始まる。逃げようのない死からくる重い空気が全体を流れている。医師は一般人より多くの死に触れるのだから、自身の死に対する恐怖は、独自の理屈ができあがって薄れていくものだと思っていた。でも、著者は、告知されるのが自分だったらこんなに穏やかではいられない、など、とても人間的。ある意味で医師らしくないけれど、それが、医師として医療人としての真の姿なのかもしれない。2016/04/29
Ayano
1
現場での患者とその家族との出会いや別れが中心のエッセイ。癌は告知しない、がスタンダードだったときの話。今なら状況も、関わる医療者の捉え方も異なるのかなとは思った。 亡くなること、老いること、家族との関係…疾患が悪化の引き金になることもあるし、状況が疾患を引き寄せることもある。機械的にはいかないのが心情だよなーと思いながら読んだ。2019/10/30
アツシ
0
大学教授の著者が関わった患者さんとのエピソード集。いずれの患者さんにもドラマがあり、考えさせられる。多少の脚色はあるかも知れないが、事実の重みを感じる。癌の本人への告知をしない点など、少し古い時代を感じるが、それが一層医師の苦悩を高めている。生命に関わるということは答えのない難問に関わるということなのだろう。とても読み易い文章で他の作品も読んでみたい。2023/09/10