内容説明
憧れの女性に着せたい一心で華麗な振抽を精魂こめて縫い上げた刺繍職人、自分のため店の金を横領した若者の釈放に奔走する遊女、逢瀬(おうせ)の翌日は必ず負ける力士の出世を願って身を引く芸者……ここに描かれるのは、私利を顧みず人間の情に生きた悲しく優しい「人情馬鹿」たちだ。美しい風俗と江戸っ子気質(かたぎ)が色濃く残る大正期の東京下町を舞台に、人生の達人が共感と愛惜の想いをこめて綴った名作12話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いくっち@読書リハビリ中
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長いこと絶版だったが、2009年5月に単行本が出たようだ。買おう!絶対。(ここから感想)本人含め関係者が亡くなっている以上、この本に書かれていること全てが真実だとは言い切れないのだが、事実だと思って読めば読むほど面白い。短編のひとつである『遊女夕霧』を立川談春さんの落語で聴いたことが読むきっかけとなりました。落語はこの話を元に吉川潮氏が脚色したもの。川口松太郎氏が小説家になる前に講談速記の悟道軒円玉の速記の手伝いをしながら2階に居候をしていた頃の自分と円玉と出入りする人々を巡る人情馬鹿を綴った短編集。続。2006/09/19
ミメイ
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☆5久世光彦氏オススメの著者。読んでみると、すごく面白い!
Peter-John
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『曠吉の恋』で出てきた川口松太郎の小説。三益愛子の旦那さんでしたね。 連作短編集で講釈師の悟道軒円玉。そこで講談速記の手伝いをするのが川口松太郎こと信公または信ちゃん。 『曠吉の恋』比較してはいけません。格が違います。 グッときたのが「親なしっ子」。元義太夫語りだったお茶屋の女将の美芳がこれから戦争に行く士官と酒を飲み義太夫をうたっているうちにできてしまう。名前を聞くと小さな頃に取られてしまった実の息子。 もうひとつは、ほとんどが台詞で成り立っている「七つの顔の銀次」。すごい技巧の冴えです。2019/06/08