内容説明
人は生得あさましいものであるが、南無阿弥陀仏と称えれば、必ず救われる――平易な言葉で教えを説き、近畿一帯に大勢力を振るった英邁なる高僧は、私的にはどのような男であったか。争乱と災厄の世に、真宗王国を築き上げた、常人を超えた精気の人蓮如の真実を、宿命の娘たちの恐るべき眼で描く、話題の長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
38
蓮如というひとは、正直申し上げて、よくわからなかった。しかしこの時代にあった残虐さ、浅ましさ、女性の扱いというものは、目に見えるようであった。皆川さんの筆にかかると、滴り落ちる血の一滴さえ美しく思えるのは、なぜだろう。2015/11/16
ophiuchi
9
蓮如の娘が激しく変わる環境に翻弄されながら生き抜いた壮絶な一生が描かれていて、これは男には書けない小説だと思った。その名を知るだけだった蓮如の生臭さに驚き、他の人がどう書いているか知りたいと感じた。2017/01/08
KUMAPON
7
日本語が本当に端正で美しい。それだけに、応仁の時代の血と腐臭にまみれた情景のおぞましさが際立つ。何よりも、二人の娘の視点で語られる蓮如という人物があまりにも不気味。あとがきで皆川博子さんご自身の父親への憎しみを投影した作品、と書かれていて、驚くと同時にその生々しさに納得もした。皆川さん、宗教二世でいらしたのですね(創始者の子にはこういう呼び方はしないのかな…)。2022/12/21
さや
6
蓮如の歴史はあまり覚えておらず、もっとしっかり勉強しておいたらもっと解像度高かったかもと思った。本筋ではないので知らなくても問題無し。乙女と万寿、2人の少女が自分の生まれや場所である程度決められた生き方だったり運命だったりに抗うように生きる姿が、哀しいけど強く美しい。2024/12/31
安南
3
皆川博子を読みはじめたきっかけになった本。それまでの蓮如像を覆す、凄まじい描写に圧倒された。再読したいけれど、もう、絶版なのかな。