内容説明
たぶん僕は変わったのだ。四年前にはとてもできなかったことが,今の僕にはできる。――本書全体のプロローグといえる第一話「掌の中の小鳥」で真っ赤なワンピースの天使に出逢った主人公は,一緒に退屈なパーティを抜け出した。狂言誘拐の回想「桜月夜」で名前を教わり,御難続きのエピソード「自転車泥棒」や不思議な消失譚「できない相談」を通じて小さな事件に満ちた彼女の日常を知るにつれ,退屈と無縁になっていく自分に気づく。小粋なカクテルの店〈エッグ・スタンド〉を背景に描かれる,謎を湛えた物語の数々。巧みな伏線と登場人物の魅力に溢れたキュートなミステリ連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美登利
81
加納さんの新作が出ると知り、読んでなかった彼女の作品を図書館で借りてみました。凄い!1995年の古い本です。染み込んだ特有の匂いが懐かしく感じました。物語は加納さんだ!と思える日常ミステリーで久しぶりに難しい謎解きとその優しい雰囲気にのまれました。連作短編なのですが、初めの話はかなり苦しくてその解決は最後まで出てこないのが気掛かりでした。圭介と紗英のカップルは好印象。お互い無い部分を補っているね。2人ともモテて格好良すぎるのが現実的では無いけれど、その頃は私だって同じように夢見てたこともあるのよ(笑)2016/10/15
星落秋風五丈原
16
解説赤木かん子。思いを寄せていた女性容子が最近「私毎日少しずつ殺されている」と電話をかけてきていた矢先、彼女の夫で元先輩の佐々木に出会った圭介は、学生時代に彼女の絵が台なしにされた事件の真相に気付く。一方であるパーティで出会った女性の高校時代の謎も説き明かす。タイトルは「手の中の小鳥は生きているか死んでいるか」と尋ねると賢者が「幼き者よ 答えは汝の手の中にある」と答えたところから。なかなか意味深な会話です。2001/05/26
チガ
16
『可愛らしくもしたたかな、女たちへ』女性が1人で切り盛りするバー、「エッグスタンド」の常連となった1組のカップル。その女性の周りに起こる日常の謎を解いていく連作短編集。主人公の恋人の紗英もバーの店主の泉さんも強い女性、バーに桜があるって素敵です。主人公は謎解きの頭の良さはあるけど、女性の気持ちはやはり女性しかわからないのかな、と思ってみたり。ミステリーとしては流石です。2012/01/22
六花
6
図書館でみかけて再読。登場人物がみんな魅力的。謎解きもおもしろいし、でてくる人々の心の機微も感じられて、読後感がよい。定期的に読みたくなります。2014/03/26
おさと
4
ほんわか、しんみり、じゃない加納作品は始めてかも。2015/07/13