内容説明
「吾輩は猫である。名前はまだない。」苦沙弥先生の家に拾われた猫の「吾輩」から見れば、人間社会はこっけいそのもの。無名猫の視点から、軽妙洒脱な文体にのせて放たれる文明批評と渋いウィットは時代を超えて読者の心をつかんできた。見識とシャレ気あふれる漱石の永遠のエンターテインメント文学。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mint☆
142
有名なフレーズから始まるこの小説。実は初読み。猫から見た人間世界。褒められてないぞと思うんだけど何故か褒められていると思って得意気になっていたり、本当は雑煮なんて食べたくないんだけど誰も止めないからと言い訳をし、餅をかじって歯が抜けなくなるとか間抜けさを感じる一方で、どこで覚えたのか難しい言い回しや博識さに驚く。それにしても長い小説だ。だらだらと続く日常の描写は、人間とはなんて滑稽な生き物なんだという漱石の気持ちのあらわれか。蛇飯は食べたくないぞ。下巻へ続く。2021/03/06
つくよみ
98
上/2 「吾輩は猫である。名前はまだない。」あまりにも有名な書き出しで始まる小説。古典と言えども堅苦しくは無く、猫が世相を、人間を、身の回りの出来事を、猫目線で語る作品。古い言い回しや慣用句のせいで、かなり読みにくくは感じるものの、あまり細かい事に拘らず(猫の言っていることに、一々拘っても仕方がない?)立て板に水と言った風情の、軽妙だけれどもやたらとボリュームのある文章を(なるべく)さらりと読み流すようにしてみたら、それが意外に楽しかったりした。先生、寒月、迷亭。個性的な人物。そして、猫。彼らの行く末は?2014/06/04
扉のこちら側
79
2018年210冊め。新潮文庫、青空文庫では既読であるが、ナツイチ大賞本であるため集英社版で再読。こちらは上下巻組になっている。自分を賢いと思っている猫の語りが愛らしい。『意識の流れ』系小説であるので日常描写はだらだら長いがそれを楽しむ話である。下巻へ。2018/06/25
aika
46
偏屈、以外に例えようのない苦沙弥先生に拾われた、自らを「吾輩」と称する猫が繰り出す言葉の痛烈さに、漱石ってやっぱり面白い!と唸ってしまいます。お雑煮のもちが喉につまって苦しんでるのに、家族には踊っているとしか見られない場面は、子供の頃と同じように鮮烈です。苦沙弥先生の家で繰り広げられる、迷亭さんのホラ吹きやいけすかない資産家・金田家の令嬢をめぐる寒月くんの恋の話など、猫から見ると、くだらないことに一生懸命な人間たち。その滑稽さが微笑ましくもあります。三毛ちゃんや黒など、猫仲間の世界もクスッと笑えました。2020/10/28
ねここ
38
初夏目漱石!やはり少し昔の文体と漢字多めなのでいつもよりは読みづらくありましたが面白く読めました!日常の中の気付かないようなところに鋭くメスを入れる猫。猫からみた人間の姿はなんとも不思議である。他の視点からばっさり斬ることで分かることもたくさんあるんだなぁ。猫の考えには成る程と思うところも。面白い中にも色々発見がありました。2015/03/21