内容説明
生まれ故郷の古い住宅地図には、あの少女の家だけが、なぜか記されていなかった。あの家が怖くて、ずっと帰らなかったのに。同窓会を口実に、ひさしぶりに故郷を訪ねた主人公の隠された過去、そして彼の瞼の裏側に広がる鮮やかな“緋色のイメージ”とは、一体何なのか……。直木賞受賞の傑作ホラー。表題作ほか、選考委員の激賞を受けた「ねじれた記憶」など、粒よりの七篇を収録。痺れるように怖いのに、とてつもなく懐かしい――高橋克彦ならではの独自の世界を満喫できます。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
99
正々堂々プロット勝負の短編集。いずれも「記憶」にまつわるホラーやミステリーだが、謎とその秘密が単純にストーリーとして面白く、陰惨さや性的な不穏さもスパイスとなって読者を刺激する。人の「記憶」の曖昧さや都合の良さも隠し味としてよく効いており、リーズナブルだけど味の良い手軽なイタリアンみたいな味わいだった。満足度は高いけど、直木賞受賞作って聞くと、え、そこまで?って気がしないでもない。2020/04/05
hit4papa
97
ミステリ、ホラーはたまた世にも不思議な物語?な短編集です。「記憶」がテーマの作品で、著者の故郷である東北地方(主として岩手)がノスタルジックに絡んできます。ご当地とも言えますか。各作品につながりはありませんが、主人公は著者の分身のように思えますね。アンハッピーエンドなオチが特徴的ではあるものの、予想がつくので衝撃的ではありません。三十年ぶりに訪れた宿で出会った娼婦は「ねじれた記憶」、忘れ去った故郷で再会した女性との因縁「遠い記憶」、原因不明の発疹に隠されたおぞましい過去「膚の記憶」他【直木賞】2022/07/28
ろくせい@やまもとかねよし
75
「記憶」を主題とした7つの短編集。近親者の死を抱えて生きる主人公たち。「死」をめぐる真相を辿るなか、主人公たちは、過去の近親者の「死」を時間や意識を超越させていく。そしてその「死」を自己に近づけていく。自己の意識は所詮利己的なものだろうか。過去に精算した利己性からの他害行為は、結局精算しきれず自己意識の中の利他性によって苛まれたのか。2018/09/23
遥かなる想い
73
第106回(1991年下半期)直木賞。思わず入り込んだ。文章力がある。2010/04/26
はらぺこ
62
記憶をテーマにした短編集。 読み易くてオモロかったです。 古い記憶・忘れてる記憶を辿って真相に行き着く。でも、記憶を辿る過程で自分自身の思い込みと周りから与えられる情報で新たに記憶を書き換えた可能性は無いんやろか?と考えると読後は少し不安になった。 どれも少しゾッとして好きやけど『霧の記憶』だけは途中で読むのがちょっと面倒になった。でもオススメの1冊です。2012/01/11