内容説明
「ここがお前の帰ってくる場所だ」一枚の絵がそう語りかけてきた。北欧ルネッサンスの巨匠ブリューゲルに魅せられた文学者は、自らの内奥への旅へ出た。深い内省によって生と芸術の真実に迫る日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
九鳥
16
ブリューゲルに魅入られた著者が、ブリューゲルの絵を訪ね歩いて自分の半生を振り返る。一見牧歌的な人間賛美のようでいて、人間の滑稽さ、皮肉、絶望をも見つめ続けた険しい画家の目。西欧と北関東が自在に融合して、普遍的な人間の生について思いを馳せる。形而上的かつ技巧的な文章が多くて、不慣れな私には少々読みづらかったが、作者の目を通して「謝肉祭と四旬節の戦い」の絵の見え方が変貌するのを経験し、胸が高鳴った。2009/06/29
クナコ
12
初読。失敗してしまった。ブリューゲルの解説・雑学本と思ってエッセイ本を買ってしまった。例えるなら、私は著者を添乗員とした観光地ブリューゲルへの旅を希望していたのに、実際には観光地ブリューゲルへ行ったことのある著者の思い出話を聞いた印象。私が悪い。本書をエッセイと思って読む準備ができていなかった。ここに書かれた画家の姿は、著者に感銘を与え、著者がその優れた感性を総動員して想像し読み取った画家の姿だ。画家のあり方について共感、納得する箇所は多かれど、随所に現れる著者の濃い人生経験描写にはめまいが起こった。2020/02/06
-
- 電子書籍
- 剣と魔法と学園モノ。Lv.4 キルシュ…