内容説明
私も,物語を書いてみようかな――入江駒子のつぶやきは「じゃあ書いてごらんよ」の声にあっさりと迎え入れられた。幾つも名前を持っている不可解な女の子との遭遇,美容院で耳にした噂に端を発する幽霊の一件,学園祭で出逢った〈魔法の飛行〉のエピソード,クリスマス・イブを駆け抜けた大事件……近況報告をするように綴られていく駒子自身の物語は,日々の驚きや悲しみ,喜びや痛みを湛え,謎めいた雰囲気に満ちている。ややあって届く“感想文”には,駒子の首を傾げさせた出来事に対する絵解きが。第三回鮎川哲也賞を受賞した『ななつのこ』に続く,会心の連作長編ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
240
“私がミステリを愛するのは、そこに必ず答えがあるからなのだと思います”〈あとがき〉に記される加納朋子さんの”身近なミステリー”の醍醐味を味わえるこの作品。そこには、凝った構成の先に描かれる入江駒子の物語がありました。駒子が書き下ろす比喩表現に満ち溢れた小説が読めるこの作品。そんな小説の種明かしを瀬尾の感想でまとめるという絶妙な構成を楽しめるこの作品。”学園もの”として楽しめ、時代感をも楽しめ、そして”身近なミステリー”としても楽しめるこの作品。加納さんの今に続くミステリー作家の原点の一つを見た作品でした。2023/06/29
hiro
221
『ななつのこ』に続いて加納作品2作目。前作は作中作の『ななつのこものがたり』がつなぐ日常ミステリーの連作短編集だったが、今作は誰かから届いた手紙がつなぐ4編の連作短編集。『ななつのこ』を読んであと、『ビブリア』や『古典部』などの色々な人気の日常ミステリー作品を読んだので、前作とは変化をつけたとはいえ、中盤までは正直物足りなさを感じた。しかし最終章では、それまで仕掛けられた伏線の回収を楽しむことができた。駒子と瀬尾、友達とのその後を見て見たいので、続けて駒子シリーズの最三作『スペース』を読んでみようと思う。2012/09/29
ユメ
173
『ななつのこ』では駒子の書く手紙に、今度は彼女の綴る物語に夢中になった。駒子の観察眼は実に繊細なのである。日常に佇む謎を見つけ出すだけではなく、私が日々感じてもそのままやり過ごしてしまうような心情を、ちゃんと掴まえて言葉に載せてくれる。瀬尾さんの見事な推理力は、空想力すなわち「空を想う力」なのだという。彼と駒子に共通する、ロマンチックな夢を見続けていたいと願う心も、私がこのシリーズに惹かれる理由の一つかもしれない。二人が紡ぐ物語を読んでいると、都会の空にも星があることを見つけた時のような安心感があるのだ。2015/06/04
kishikan
171
前作の「ななつのこ」が構成や文章共に印象に残る作品だったので、続編も手にしました。瀬尾さんへの手紙、駒子さんの書くミステリ?小説、瀬尾さんからの謎解きの手紙という構成は今回も同じですが、駒子さんの学生生活も描かれそれがまた楽しい。今回の特徴は、各編の最後にミステリアスな「誰かからの手紙」が加わっていること。そして、各編独立した話になってはいるものの、どこかで関連付けられ、そのこの手紙が最後の物語の謎のキイになっているということです。今回もちょっぴり切ないけど、楽しさと優しさにあふれた素敵な物語でした。2012/02/15
ダイ@2019.11.2~一時休止
163
駒子その2。短編集。日常の謎。駒子の手紙に潜む謎に対して瀬尾の解釈って感じが面白かった。2014/09/17