内容説明
振り返った彼女に「美代子!」不覚にも彼は叫んだ。別れて4年、彼女は別人と見まごうほど美しさを増していた(「別れて以後の妻」より)。あの日、あの時、僕らはどうだったか。そして今…。“思い出”を軸に紡ぐ著者自選の恋愛作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Strega Rossa
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「泣くには明るすぎる」。片岡義男がかつて出演していたFMラジオの「きまぐれ飛行船」をなんとなく思い出した。月曜日の夜、深夜1時から3時までのゆったりとした番組だった。この短編は、終了したラジオ番組を数年ぶりに一度だけ復活させるというお話だ。ただ、それだけでは終わらない。片岡の小説は、そのほとんどが叙情的ではない。だが、この作品には哀愁が漂っている。心理描写を排しているからこそ伝わってくる感覚だ。タイトルに「泣く」というワードを使っているところからみて、片岡は読者を泣かせることを試みたのかも知れない。2018/08/29