内容説明
昭和初年のプロレタリア文学運動。弾圧下の非合法活動。戦前・戦中・戦後を通し真摯に闘い続ける著者が、激動の時代の暗い淀みを清冽、強靱な“眼”で凝視し、「時」の歪みの底に沈む痛ましくも美しきものを描出する自伝的短篇連作12篇。窪川鶴次郎の死の周辺を綴った「その十一」の章で川端康成文学賞を受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
35
プロレタリア文学の作家として出発した佐多稲子さんの連作短編集。昭和初期のプロレタリア運動の断面や特高警察の取り締まりなど、今の日本の社会からは想像しにくいことが書かれていて、興味深かった。非常に張りつめた文体が印象的で、簡単に読み飛ばすことができない、これぞ純文学という感じの作品。時流に流されず体当たりで懸命に生きてきた佐多さんの人生のずっしりとした重みが、充実した読後感になって残る。自分の夫だった人の死を書いた描いたその11がベスト(川端康成文学賞受賞作)。続く。2012/10/15
Ayakankoku
11
佐多稲子さんの文章は、大学入試でしばしば扱われているため、ずっと読んでみたいと思っていた。読み終えるまでに半年ほどかかってしまった。2020/04/27
qwer0987
7
追憶の過程で生じる思いを真摯に描き出しており忘れがたい。個人的に印象的なのはその三とその十一か。その三は当時の女性たちの立場が仄見えるよう。少女のまま著者を産んだ母の追憶と思いきや大人たちの思惑で私生児を産んだことにされてしまった女中マサの状況に痛ましい気持ちになる。その十一は別れた夫の死に彼女なりの屈託を見る。夫への愛憎は消え、相手の家庭に踏み込みはしないが、彼の病状と死に無視できない部分もある。その近いようで遠い距離間の感情の描き方が印象的。その他の作品も心情の機微を丁寧に描いており心に残った2025/12/11
あ げ こ
7
過去を懐かしく振り返る時のような、痛みさえも快い刺激となり得る甘さを伴う類のものではない。むしろ過去と言う時に佇むことによって生じる葛藤や哀しみ、後ろ暗い感情のすべてを見据え、自らの未熟さ、愚かしさを、時と言う流れの中に埋れさせぬ厳しさがある。今を歩む自らが抱くものとは違う、だがかつて真摯に抱き続けていたものであるからこそ、色合いを変えたいくつもの思いの間に、不意に呼び覚まされた遠い日々と、今に在りながら、その時々に佇つ自らとの間に生じた齟齬。そこから目を背けぬ強さは美しく、胸に秘めた激しさを感じる。2014/08/19
Narumi
2
エッセイ集のようで、昔あった人を思い出すという内容のものが収められています。この方の文章はいつも柔らかいのですが、内容は柔らかくない。発行が1976年のようですが、自分が特高に引っ張られた話、満州に慰問に行って現地でなくなった兵士の葬儀に出る話、樺太を越境してソ連に渡った岡田嘉子(ここでは仮名)にモスクワで会う話など、とにかく濃い。まるごと昭和前半史の証言になっています。2020/12/12
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