内容説明
孤独な少年の日々に垣間見た〈生〉の光と闇。青年の「私」が目撃する様々な男女の愛と裏切りと死。フランス人女性との甘美な愛の生活――。独立した挿話が現代史のモザイクを形づくる連作第二集。
目次
泉
河口風景
夜の歩み
夏の海の色
凍った日々
水の上の顔
古い日時計
祭の果て
海峡
彩られた雲
吹雪
月の舞い
ル・アーヴル午後5時30分
雷鳴の聞える午後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりこ
3
私とエマニュエルの愛の生活、静かな充実した話の方が好き。哲学的な冗談はあってもいいけど、深刻になるのはよくない。8ヶ月間NYとヨーロッパの別の生活になる予定を、私が一緒に行くと決めた二人の喜び。愛と生活のマイヤーの話も面白かった。2019/02/26
はりーさん
2
人の内面を巧く書き出しているので、今読んでも古さというのを全く感じない。欧州時代と幼少期というのも良いバランスである。2015/05/24
Muji
1
これを知ったのはセンター国語の過去問で、辻邦生という作家も今まで知らなかった。自分は受験生であるのだがこの話の登場人物、咲耶さんにほのかな恋心を抱いてしまいわざわざ図書館の書庫から見つけ出していただいて速攻で30ページを読了。 試験で切り取られた部分から続きがあるものだと思っていたのだが終わりの部分であったとわかり、正直物足りない気持ちだ。ネットで検索してみると昭和の時代の中学教科書に載せられていたらしく、当時は咲耶さんに恋をしたという声が少なくなかった。自分は高三になってまで……、となるが笑2012/12/23
東京燦然
0
2つの物語が並行して綴られるが、一つ一つの物語が短編として趣深くある。なにより小説全体に見られる辻邦生の巧みな自然描写により、行ったこともない風景や、生きてもいない時代であっても、細かく脳裏に浮かび上がってくる。古さを感じない、人間心理の奥にある原風景を想起させてくれる一冊。2022/02/02
夜遊の月
0
「都会では、自分がする前にすべて他人がやってくれた。スポーツも自分で楽しむのではなく、他人のやるのを見るのだった。ー 雑誌や映画やラジオやTVがすべて私たちのかわりに生活してくれて、私たちは部屋でただのらくらしているほかなかった。生活ではなく、生活の幻影を追って生きているのだった。ー」 日本からフランスへ。 人生の一瞬一瞬を愛でるような短編集。2021/09/21