内容説明
大義のために血盟を誓った3人の武士の中に、ひとりの裏切り者が。疑心暗鬼となった彼らのひとりが殺されひとりは自決し、事件は解決したかに見えたが……。仇討ち遂行のためには手段を選ばぬ大石内蔵助の冷酷さを描く「殺人蔵」ほか、おなじみ忠臣蔵を彩る人物たちの意外なエピソード。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
26
忠臣蔵という大木の、今日はあちらの枝、明日はこちらの枝と書いてみると、こうなる。「殺人蔵」はミステリー、「蟲臣蔵」「俺も四十七士」は、あまりにもまばゆい光に負けてしまった浪士の悲劇と、物語の雰囲気も様々。松の廊下の刃傷の前触れに始まり(「赤穂飛脚」)、討ち入りの一年後で終わる(「生きている上野介」)この短篇集は忠臣蔵の端緒である刃傷を小さな芽とすれば、最後は枯れ木に咲いた徒花といったところか。主君の一大事を知らせるため、江戸・赤穂間を5日間で走った事で有名な飛脚。2003/07/21
出世八五郎
10
忠臣蔵ものの短編集で連作ではない。文庫化にあたり『行燈浮世之助』『変化城』が著者により外されたと縄田一男の解説が充実している。『殺人蔵』で大岡越前守が語り手として登場するが、縄田一男の解説を読むまでは気付かない。山風の作品は色々と敷居が高いというか、読者に優しい面が多いが優しくない面もある。貝賀弥左衛門この名を御存知ですか?2014/05/14
金目
7
スポットライトの影だけを描いたような忠臣蔵外伝の短編連作。松の廊下直後の早飛脚とこれを追う兇賊らの暗闘を描いた「赤穂飛脚」、内蔵助の冷酷冷徹ぶりが大岡忠相の目線から語られる「殺人蔵」、色に溺れた脱盟者の「蟲臣蔵」、一方で義士に加わりながら光を浴びられなかった「俺も四十七士」、義士2番隊を題材にした「生きている上野介」の5本。忠義を標榜しながら、それだけで生きるわけにはいかない人々のなんと狂おしいことか。俗に言う48人目こと毛利小平太は、忍法忠臣蔵よりはこっちの方がマシな最後だったかも分からんな2017/03/13
冬至楼均
6
”中心”よりも外縁を書いた作品の方が面白い。「赤穂飛脚」はど直球過ぎてらしくない。2014/03/15
タツ フカガワ
4
中・短編5話の連作で描く忠臣蔵だが、さすが奇想天外、驚天動地のさらに上を行く山田風太郎、ミステリー仕立てあり、どんでん返しありで、頭から尻尾まで餡子いっぱいの鯛焼きのように楽しみました。なかで「俺も四十七士」では、山田風太郎作品には珍しく(?)ほろりとしました。2016/12/29