内容説明
自殺した同級生の葬儀に故郷秋田を訪れた作家がふりかえる自らの生の軌跡。友と聴いたクラシック、仲間と励んだ雪の中の野球……万引事件や生家の破産を越えて胸に迫るのは懐しい思い出の数々。人生の終楽章を迎えて、自分を支えてくれた友人、父の愛、妻の献身に気づく。胸を打つ感動的な直木賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
196
第98回(1987年)直木賞受賞。 ひどく昭和的な 懐かしい物語であり、 作家矢部の40年ぶりの高校同窓会に一緒に 参加している感覚だった。 通り過ぎたものを思い出す感覚.. 読んでいると なぜかほろ苦く 心地よく 感じるのはなぜなのだろう。 抑制された筆致がこの感覚を加速する。 それぞれの人生の終楽章がしっとりと 奏でられている、そんな物語だった。2017/05/29
hit4papa
55
自死した同級生の葬式に出席するため、高校時代を過ごした田舎町へ赴いた主人公。50歳を過ぎて、仲間たちとの日々、そしてこれからの終わりの日に思いを馳せます。いつの頃か、故郷から足が遠のいてしまう、という主人公の気持ちには近いものがあります。人生の折り返し地点を過ぎ、過去の出来事が去来するのを避けた思いが強くなるのでしょうか。主人公は、大きな影響を与えた友の死の原因を探りながら、まき散らした恥の記憶が蘇ります。あらためて違う視点で見ることで、異なる意味があることに気づきます。侘しさ満開となりました。【直木賞】2021/08/02
NORI
22
1987年直木賞。同級生の葬式のために帰省した主人公。昔の仲間との再開。名残を残しつつも変わった街の描写と、中高時代の追憶とを行き来しながら、50余年の人生を振り返る。これは私小説に近いモノなのか?他人の人生における「こういうことがありました」という出来事の羅列として読むと、正直あまり面白くない・・。一方、創作世界であったならば、細やかな過去の描写やリアリティ溢れる人間模様など、世界の作り込みに対する想像力が素晴らしいとも思う。なので、自伝的小説ではなく、完全創作世界であって欲しい・・と思ってしまった。2025/04/01
きのこ
19
直木賞64/187 現在の話にはそれなりに引き込まれるけど、過去の話がどうもぱっとしないし、やや脈絡に欠けてます。終盤に亡くなった面々が登場する様はまるでNHKかと思いました。好みではなかったかな。2018/01/17
MIKETOM
7
第96回直木賞。高校卒業以来ほとんど帰っていないあの町。当時の同級生の急死に、数10年ぶりに訪れる。そしてかつての旧友たちと旧交を温め、昔の自分に帰っていく。当時はみなやんちゃな高校生だったが、今では町の顔役だったり商売で堅実な人生を歩んだり当時そのままに趣味に生きていたり、かと思えば人生に敗北し自ら死を選んだ者もいたり…。50歳の男たちの人生の終楽章を改めて思う。てな話なのだが全体に地味。しかも暗い。度重なる万引きで高校を退学になったり酒乱の父親のいる家に帰りたくなかったり、イマイチな印象。2023/07/02