内容説明
「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていた。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性と関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。「人間失格」はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を断つ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
黎明卿(禍腐渦狂紳士タッキー)
210
カフカの変身に次ぐ好きな作品。暗くドロドロしてるっていうより、自分自身を好きになれず、ひたすら自己否定を繰り返す不器用な人の物語だと読む度に思います。ん〜、やっぱり太宰先生本人のことなのかしら、って感じる部分があり、どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのかこの曖昧さも好きな理由のひとつ。また、私が目から鱗だったのが、世間や社会といった誇大した表現を個人にしたこと。許せないのは世間ではなくあなた……。ずっと解せなかった世間・社会が許さない。私にとっては、その答えが知れた特別な作品です。2018/02/18
masa@レビューお休み中
207
人間失格の最終回が掲載される前に自殺しているため、遺書のような小説ともいわれているようだが、単純に太宰は告白をしたかったのではないだろうか。どこにも本性をさらけ出すことができなかった彼が一大決心をしてすべてをさらけ出してみようとした。そう考えると、すべてが納得できるのだ。だからこそ、この作品が唯一無二の傑作になったのではないか。つまりは、太宰治の渾身の一作であり、集大成である作品を書き上げてしまったから、彼は生きていく意味がなくなってしまった。何の根拠もない推測であり、勝手なる僕の思い込みなのだが…。2015/07/10
優希
175
3つの手記と、第3者が手記を読むという構成が見事です。3枚の写真と「恥の多い生涯」は大庭養蔵の半生として書かれていますが、かなり病んでいるのがわかります。道化に徹し、壊れていく姿は太宰の破滅的な人生をキャラクターによって演じさせたと言ってもいいでしょう。何処かで押された「人間失格」の烙印が自分のコントロールできない部分で大きくなり、それでいながら他人に取り繕う姿。壊れていく様子には重なる部分を感じずにはいられません。この作品はエゴの塊と取るか、凄く共感する人かに別れそうですが、自分は後者です。2014/06/24
HIRO1970
153
⭐️⭐️⭐️随分前に読みました。2005/05/31
扉のこちら側
148
これで夏休みの読書感想文を書いた8歳の私は何を考えていたのか。ちなみに「これは自分を人間失格だなどとは思ってもいない人間が書いた小説だ」というようなことを書いて、職員室では色々とネタになっていたらしいが、全く記憶にない。いわゆる小2病。恥の多い人生だ。2010/01/28
-
- 電子書籍
- 不妊男子【単話】(4) ビッグコミックス