内容説明
『新・平家物語』は一代の大作だけに、著者の意気ごみも格別であった。ふつうは編集部まかせの“前回までの梗概”も、著者自ら「筆間茶話」として執筆。筆休めに構想の一端を語り、史談人物論はもちろん、身近の雑記にも味わい深く、梗概以上の梗概として好評だった。近畿を中心に東北から中国、四国までの丹念な取材紀行が「新・平家今昔紀行」。源平ゆかりの地の今昔が才筆に躍る。
目次
新平家落穂集
新平家雑感
新・平家今昔紀行
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
luadagua
12
吉川英治氏による新平家物語のエッセイ。本編を読みながら、こちらも読み進めていたので、創作の苦悩や登場人物の肉付け、読者とのやりとりなど臨場感があっておもしろく読めた。平家物語ゆかりの史跡を訪ねる旅行記も楽しそうだった。吉川氏の言うように平家はさまざまな美しい文化を遺していると思う…はやく平家納経を観に行かなくては。と、私はまんまと平家びいきと相成りました。1年半近くかけ、この素晴らしい物語にじっくりと取り組めてよかったです。ありがとうございました。2025/06/15
koz
4
本作を長編読破前に読めて良かった。これからシリーズを読む方は共に読むことをお薦めする。史実とされているものと、古典の叙事詩性の間で筆者がどのようにして創作したか語られているのが面白い。勝者が敗者について書いた歴史でいかに清盛という人間像が作られていったか、平家は源氏に敗れたが、文化の上ではついに勝っていた。また源氏の末路よりも平家滅亡の相のほうが、より以上、詩であった。との想いは、この小説の根幹をなすように思う2010/12/05
雪野きずな
3
吉川英治先生の随筆は創作秘話や歴史観がでていて興味深い。2019/01/01
minu tanu
2
吉川先生がいかに現地を見て構想したかよくわかります。神戸在住者にはうれしい会下山とか鉄拐山の地名。2025/09/10
てり
2
「新・平家物語」著作当時のエッセイと取材旅行記など。昭和20年代半ば~30年代初頭のもので旅行記なども時代を感じる。興味深く感じたのは読者との距離の近さで、当時の大衆娯楽小説の存在感の大きさが感じられる。扱う情報の量も早さも桁違いにデカくなった現代よりも、著者~読者の関係性がはるかに濃密に感じられるのはなぜだろう。2021/04/04