内容説明
刃傷事件から討入りまで、忠臣蔵はどこをとっても胸を搏つドラマである。元禄の事件より二百七十年以上もたった今、吾々の心をかくも動かすのは人生の縮図を形をかえてみるからだろう。振幅の激しかった大石。また大石と共に立ち上がりつつも、消えてゆく同志。偽りの恋に情熱のすべてをかける女心の哀れさ。また吉良方にも義士ありということ。――本書の執筆は「宮本武蔵」の起稿と同年、著者の心気いやが上にも充実する時だった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
96
遂に討ち入りです。浪士たちの動きが丁寧に描かれているので、その情景をありありと想像することができました。心の葛藤の中で成し遂げられたのが吉良邸討ち入りなのだなと思わずにはいられません。忠義の物語として語り継がれる忠臣蔵もこのようにして読むとただの忠義の物語ではないことを改めて見たような気がします。武士としては義を果たし、法の上では罪を犯す。これが忠臣蔵の真髄にあるものだと感じました。忠義のみが語られがちなのは何故なのでしょう。2017/04/04
海猫
83
吉良邸の絵図面を手に入れる駆け引きやそれぞれの浪士たちのドラマなど、長い雌伏の活動があった上で討ち入りへ。ここに至るまでは筆致も抑え気味で、淡々としているようにも思えた部分があるが、討ち入り場面の盛り上げ方は講談的でもあり、臨場感と躍動感に溢れる。ここいら辺はさすがの吉川英治作品らしさ。場面の分量もそれなりにあり、大いに盛り上がった。討ち入りが終わってからの後日談も紙幅がとってあり、読んでいると静謐で穏やかな気持になってくる。新春の読書として、楽しんで読めた。史実的にどうなんかな?と考えてはしまいますが。2021/01/12
Book & Travel
44
京での放蕩生活を経て、内蔵助は秘めた決意を明らかにする。その後も慎重に慎重を重ね時を待ち、ついに討ち入りへ。浪士各々の感動的なエピソードは少なめで、内蔵助、浪士達、警戒を続ける吉良側と、様々な視点から淡々と物語を描いていく印象だが、それがかえって時代の中での彼らの生き様と心情が伝わるようで心に響いた。忠義という切り口は今の時代には受け入れ難いだろうし、若い主税なんかは入らなくていいんじゃないかとか思ってしまうが、日本人に語り継がれてきたこの物語を知ることは、歴史を理解する上でも大事なのではないかと思った。2020/12/16
金吾
23
討ち入りは詳細な記載があり面白かったです。忠臣蔵を読んでいつも感じるのは行動するまでの困難さです。また時間の経過に従い経済困窮や決心が鈍ることを如何にして見極めていくのかも大変だなと思いました。吉良義士の表現は良かったです。2021/02/21
糜竺(びじく)
19
色んな名前が出てきて、情景を思い浮かべづらかった。2022/12/14