内容説明
愛しき町の息吹を描き出す「私」の東京物語少年の日の熱い感動とレギュラ-9人のその後の人生を語る「ナイン」、よりを戻す男女の話を盗みぎきする話「太郎と花子」など街に生きる歓びをうたう短篇連作集。(講談社文庫)
目次
ナイン
太郎と花子
新婦側控室
隣り同士
祭まで
女の部屋
箱
傷
記念写真
高見の見物
春休み
新宿まで
会話
会食
足袋
握手
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ばりぼー
62
何度目かの再読。人情味溢れる古き良き時代の東京を描いた、一話10ページ程度の自叙伝風小品集。ポルノ女優やストリッパーが登場する話もありますが、彼女たちとの触れ合いが日常となっていた猥雑な下町の空気が感じ取られ、ある種の羨ましさを覚えます。なかでも秀逸なのが、かつて新宿区の大会で準優勝した少年野球団メンバーのその後と心の絆を描く「ナイン」、お世話になった児童養護施設光ヶ丘天使園の園長先生との再会を描く「握手」。ルロイ修道士の「困難は分割せよ」という言葉が印象的です。巻末の自筆年譜も実に興味深い資料でした。2015/10/04
chimako
62
人と人との小さな関わりがひょっとしたら人生を変えてしまうかもしれない。たとえば劇場の照明部屋から落とした一万円札。バスに乗り合わせた初老の男性。スポーツ少年団の仲間。まさか自分のたわいもないおしゃべりが、暗礁に乗り上げた結婚にゴーサインを出すなんて、忙しいご婦人はちっともお気づきではないでしょう。市井の人々の何気ない暮らしの中の出来事を切り取った、まるでエッセイのような読み心地。最後の『握手』では胸がジンとした。表題作の『ナイン』は地区大会で準優勝した少年たちのその後が描かれる。良い話。2014/03/18
たか
60
16編からなる連作短編集。 何れの作品も著者が経験したことや見たことが題材になっており、良作揃い。 東京のいろいろな地域が舞台になっているが、かなり前の東京の原風景が描かれている。市井の人々の生活や思いも書き込まれており、興味深い。 最後の『握手』は中学校の教科書にも載ったことがあるそうで、心を震わせる人間の交流がそこに描かれている。C評価2020/05/10
Our Homeisland
29
このところずっと読んで無かったですが井上ひさしは好きな作家の一人です。長さ的には短編というよりもショートショートに近いような短い作品たちが収められていました。私の世代よりはやや上の東京の街や人などの描写は、少し同時性がかかっているという印象で、頭に浮かべることができて懐かしかったです。終わり近くの「会話」「会食」は特に印象に残りました。最後のルロイ修道士の話「握手」は以前に教科書で読んだことがありました。初出の年から私が中学の時ではないので、おそらく家庭教師をしている時の教え子の教科書だったと思われます。2015/11/20
コロチャイ
23
作者は東京の下町を転々としていたんだ。話の種も拾いながら。この短編集の最後、「握手」がぐっと心に刺さった。作者の悔恨だな。ルロイ修道士とのボディランゲージが心に残った。2025/12/10
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