内容説明
敗戦直後、食うに食えず、ペテンにかけられたみたいに北海道に渡り、運命のいたずらにほんろうされる“ロビンソンの末裔”たちの苛酷な自然との苦闘を、作者は、いささかの感傷をもまじえずに乾いた文体で描く。この底なし沼にすりへらす、人間の貴重な労働力に、本書はいやおうなしに世間の目をむけさせる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかふく
2
タイトル通り『ロビンソン・クルーソー』をもとにして書かれたようでありながら、簡単な対立軸を使えば『ガリヴァー旅行記』に近い思想を持っていると言える。レトリックのレベルでも、大地を衣服に喩え人間を「シラミ」と喩えるのは「桶物語」に近いものがある。また『日本三文オペラ』とある意味連続するように書かれた事情もあり、「ピカレスク性」も生じているだろう。何より問題は提示された言葉とそれが指し示す物とがズレにズレていってしまった状況だ。その状況の中で人を説得するにはどうすればよいか? 戦後とはどのようなものだったか?2013/11/18
シャーリー
2
戦後の北海道の開拓者の壮絶な戦いを暗い気持ちになることもなく最後まで希望を持って読めたのは、作者の文体の持つ力のせいだと思います。記憶に残る一冊になると思います。2010/03/09