内容説明
逆袈裟、袈裟掛けは見せ太刀だった。加速度を加えるための一閃、ニ閃であった。三閃は横一文字に薙いだ。手首がぐんと引っぱられ腕がのびた。「うむっ」と松軒が目を剥いた。見切ったつもりなのに、おのれの腹が裂けていた。かれは剣尖の伸びを計算に入れていなかった。――その強さ鬼の如き、小野次郎右衛門の凄絶な生きざまを描く長編時代小説!
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- 和書
- 小さな徳 須賀敦子の本棚
逆袈裟、袈裟掛けは見せ太刀だった。加速度を加えるための一閃、ニ閃であった。三閃は横一文字に薙いだ。手首がぐんと引っぱられ腕がのびた。「うむっ」と松軒が目を剥いた。見切ったつもりなのに、おのれの腹が裂けていた。かれは剣尖の伸びを計算に入れていなかった。――その強さ鬼の如き、小野次郎右衛門の凄絶な生きざまを描く長編時代小説!