内容説明
アップル・グリーンに輝く流線形の車体に高性能の陽電子頭脳を搭載した完全自動制御の夢の車、それが“サリー”だ。ところが、そのサリーを盗みだそうとする、とんでもない男が現われた! ―表題作はじめ偉大な科学者ジョーンズ博士が発明した惚れ薬が巻き起こす、若い恋人たちの悲喜劇をユーモラスに描く「当世風の魔法使い」見るからに醜悪な異星人に襲われる美女という、パルプ雑誌でおなじみのパターンを逆手にとって、アシモフ流にアレンジした「この愛と呼ばれるものはなにか」など、巨匠がさまざまな技法を駆使して紡ぎだすヴァラエティ豊かな傑作短篇15篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
19
88年(昭和63年)の520円の初版。本書は、米本国69年の「ナイトフォール、その他」を更に本国で2分冊し、それを実直に邦訳して刊行した内の後半部分で15編を収録。前半部分の邦題は「夜来たる」で5編収録。アシモフが長編の上梓を始めてからの、つまり50年以降の短編群で、脂が乗っている頃(と言うか逆にサッパリしている)の安定した筆致。男女の機微を扱った作品が多い様に感じ、ビギナー向きで読易い。「この愛と呼ばれる…」は発芽生殖(単性生殖の一種か)の宇宙種族が、地球的SEXをあれこれ誤解する様を描く。★★★★☆☆2020/01/21
ふりや
11
SFのアイデアを土台にバラエティに富んだ15篇を収録した作品集。1950~60年代に執筆されたものが多く、現代の感覚で読むとそれほど斬新なわけではないですが、どの作品も安定のクオリティで楽しく読めました。各作品の前には著者自ら書いた序文が記されており、作品の裏話やちょっとしたエピソードなどを垣間見れるのも面白いです。また、複数の訳者が訳していますが、その顔ぶれもなかなかに豪華です。印象に残ったのは、『もし万一……』『ここにいるのは』『こんなにいい日なんだから』『当世風の魔法使い』『四代先までも』など。2021/09/19
鐵太郎
4
もう半世紀の時代が過ぎたんだな、と思います。古びたSFからノスタルジーを感じてもしかたがないのでしょう。 アシモフって面白いものを書いていたんだな、と再発見しただけで良しとしましょうか。2010/02/01
オドンチメグ
3
最初の短編の時点であっ好き…ってなった。「サリーはわが恋人」はもっとハッピーな話かと思ってたんだけどこのひねりのある落とし方もすごく好み。「こんなにいい日なんだから」はほんとに最高。短いけど母親の虚栄とか見栄が見えるのと、屋外の描写と終わり方が非常に素晴らしい。外の世界は危険かもしれないが美しい。「スト破り」「戦争に勝った機械」「目は見るばかりが能じゃない」が特にお気に入り。2018/12/23
aki
3
以前はアシモフがユダヤ人であることは意識していなかったが、この短編集の「スト破り」(もう、ひとひねり欲しい)や「四代先までも」「人種差別主義者」などを読むと、出自に徹底的にこだわっていることに気づく。「当世風の魔法使い」はシェイクスピアの『真夏の夜の夢』の焼き直しかと思ったが、作者によると、ギルバート&サリヴァンの『魔法使い』にインスパイアされたものだとのこと。ギルバードのフルネームがウイリアム・シュウェンク・ギルバードだと聞いて納得。2010/03/29
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