内容説明
「私の生涯の一書はこれだ」と著者はいう。荒涼たる土の海、天へ舞い上がる沙の渦をおかして探査の旅は続けられ、その困難のさ中に先人スタインの記録の空白が、ここにはじめて埋められる。二度目の敦煌、タクラマカン砂漠の大ドライブ、四日がかりの汽車の旅。間断なく揺れる車の助手席で、あるいはたどり着いた宿舎で、根気よくとりつづけられたメモと、作家の洞察力が、秘境のかくされた顔を正確無比の筆で描き出した。シルクロードは、読者の眼前にある。
目次
酒泉の月
疏勒河を追って
飛天と千仏
弥勒大仏
蔵経洞の謎
〓得故城の静寂
張掖から武威へ
沙棗の匂い
ニヤ―精絶国の故地
大馬扎
ニヤの娘たち
褐色の死の原
崑崙山中一泊
風の鳴る廃墟
ロブ沙漠をめぐる興亡
ミーラン遺址
柳絮舞う旅の終り
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ウイロウ
3
(承前)敦煌莫高窟、河西回廊、崑崙山脈、ロブ・ノール、楼蘭遺趾。こうした名前を目にするだけで、こちらまでシルクロードへのロマンを掻き立てられる。とはいえ実際の道中はさぞや単調だったに違いない。沙漠やゴビや泥土の果てしない繰り返し。上下巻を通じて「一木一草ない」というフレーズが何度出てきたことか! その一方で、自然の厳しさと雄大さが読む者の心に強く残る。そしてそんな不毛の大地に生きる人々がとても愛おしく感じられるのだ。民族同士の抗争のみならず、河道の変遷が往古の都市の興亡に深く関わっていたとの話は印象深い。2014/05/09
naomi
0
正直、風景の描写がどこも同じように感じる…と思いながら読んでいた。娘や子どもの描写は魅力的だけど。ただ、あとがきを読みながら、これをずっと旅の間、悪路を走る間も書き留めていた記録なのだということを改めて思い、凄まじい濃さの文章だと感じた。いつか、数カ月かけて西域を廻ってみるのが夢。2021/11/16