内容説明
小さな出版社を経営する紺野美也子は、ベストセラーをねらって大流行作家に近づき、その魅力で書下ろし小説を依頼する。ところが、作家の欲望の影が、しだいに彼女を追いつめ、さらに、愛する二人の男性との間で苦悩する美也子の、破滅への道が始まる。美貌の女社長をめぐって展開するサスペンス長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユウ
20
出版社を経営する女社長が会社を大きくする為に,欲にまみれたドロドロした愛憎劇を繰り広げる…かと思っていたが,意外にもシンプルで,非常にリアリティがあり夢中になって読んだ。特に,頭取と夫への愛に揺れている主人公の気持ち,老いた頭取に再会した件は切なくて胸が締め付けらるようだった。美也子が主人公だが,個人的には特に中盤以降,房子が主人公と言ってもいいと思う程房子の存在感と感情の描写が秀逸だった。氏の作品の中でも抜群に読みやすいと思う。面白かった。2014/11/02
Nozomi Masuko
9
社員は夫と2人だけの小さな出版社を経営する主人公。ベストセラーを狙って大流行作家に近付き、その色気を武器に作家たちを翻弄する。これは松本清張作品としてはめずらしいのかな?殺しとか人間の妬みつらみみたいな話ではなく、2人の男の間で苦悩する女の心境を描いていたり、新鮮だった。好きだな、殺しのシーンないのに。笑。2015/09/13
宇宙のファンタじじい
5
松本清張の中でも1,2を争うくらい好きな作品。 世の中は、強い人間と弱い人間で成り立っている。 いや、強く在ろうとする人間と、そう出来ない人間で成り立っている。 様々な葛藤を抱え迎える結末が、とても、哀しい。2008/12/18
コルネリア
4
ドラマの再放送を録画したので、読んでみました。 事件が起きる訳ではないのに、先が気になってどんどん読み進めてしまいました。2011/08/18
ササヤン
3
女性の社会進出が少なかった時代に、夫の詩集を自分が立ち上げた出版社から出版しようとする奔走する美貌の妻。不貞な女だ、と糾弾する男たちだが、自分の美貌を最大の武器を利用するしか、その当時は生き残るしかなかったという時代性も垣間見える。しかし、夫がダメ人間すぎて、夫には感情移入出来ない。「だったら、結婚しなきゃ良かった」という結論に至る。2019/04/20