内容説明
さまざまな物を集めて分類、叙述する博物誌。本書には、現生する静物からスフィンクスやクラーケンといった幻想動物が数多く登場する。著者は、これらの「生物」への深い興味を魅力あふれる語り口で分析し、それら対象への愛を鮮やかにつむぎ出す。さながら奇想、怪異の博物誌とでも称すべき傑作エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
253
1970年代半ば「野生時代」に連載されていたもの。もう40年も前になるのだが、本書はまったく古びることがない。それどころか、斯界においては世界中を見渡しても、これを上回る博覧強記を披瀝できるものは見当たらないのではないだろうか。たとえば、フェニクスのくだりなどを見ても、ボルヘスの『幻想動物学提要』に先立つ文献として澁澤はポムポニウス・メラの『地誌』(1世紀ローマ)を上げている。幸いにも我々はプリニウスの『博物誌』なら邦訳で読めるが、メラにいたっては澁澤氏に頼るしかない。まさに秋の夜長に紐解くに好個の書。2015/10/12
阿部義彦
20
昭和58年の初版、河出文庫、フクロウのシンボルマーク入り、定価380円。二年間に渡り雑誌『野性時代』に連載されました。エジプト(元祖)とギリシャのスフィンクスは全然違う。前者は男性の顔と獅子の胴体を持った怪獣である、だが後者は美しい女の顔で胸には二つの乳房が有る、プリニウスもそれが牝である事を強調しており、神話では同性愛の悪徳に染まっていたラーイオス王を罰するために通行人に謎をかけて解けない者を取って食う。その謎を解いたのがオイディプスで謎が解けるやスフィンクスは崖から身を投げて死ぬ。その他キメラ等。2024/01/18
芍薬
20
スキタイの羊で始まり、ドードーと火鼠を挟んでキマイラで終わる素晴らしきラインナップ。流石です。この私が何故かバジリスクスを差し置いて海胆が気になって仕方が無いのです。2013/07/22
りっとう ゆき
10
実在するものからしないものまで、動物(虫や貝なども)にまつわる各地の伝説とか知識とか。昔の人の想像力もすごいし、そんなおもしろい話ばかりをかき集めてきてまとめる澁澤氏も毎回ながらすごい。2022/03/09
ふくろう
7
古代から中世の博物誌はとてつもなく魅力的だ。彼らは本当に、こういう生き物がいると信じていた、あるいは疑いを持ちながらも叙述した。実際、サイはヨーロッパの人間からすれば信じられない生き物だったが実在しているし、竜はあれほど知られているのに誰も見たことがない。現実と幻想が入り乱れることのエロスよ。2014/06/23