内容説明
灰色の山巓、裸の曠野、ヨーロッパの辺境スペイン――そこでは歴史も裸で立っている。この国の過酷な歴史と巨人ゴヤへの半生にわたる関心と数多くの旅から生まれた独自の歴史眼が、現代の深間を照射し、ひるがえって虚ろな現代日本文明を撃つ。「ゴヤから定家に至る、人間の始末のつけがたい宿命に始末をつけようとする作家の作業のモチーフの切実さを決定的に跡付ける」好エッセイ集。
目次
なぜゴヤか?
スペイン便り
グラナダ暮し
歴史について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
426
本書は1)ゴヤに関する『PLAYBOY』誌のインタビュー。2)1977年~78年に堀田がスペインに居住していた折々の断想。3)77年~78年に暮らしたグラナダでの暮らしを綴ったもの。4)歴史について等をめぐる随想からなる。40年以上も前のものだが、堀田の瑞々しい感性は古びることがない。若い時から静謐であった彼の文体によるところも大きいかと思われるが。堀田の目を濾過して語られるスペインは郷愁とほのかな哀愁に満ちていて、それを読む私たちのスペインへの憧憬を掻き立ててやまないのである。2020/06/29
浅香山三郎
20
ゴヤの評伝小説を書くこともあつて、スペインに住んだ著者が、フランコ総統が死に、カルロス国王の新しい体制を模索するゴッタ煮情況のもとで、スペインの風土のヨーロッパにおける歴史的特殊さなどを下敷きに、同国の過去から現代迄を考察するエッセイ。例えば、そのうちの一編「アンダルシーア大巡礼」では、中世的な土俗的な魅力をもつスペインの古い地層に触れ、スペイン内戦の共和国側の精神の痕跡をも描く。日常生活から、歴史へと思ひを移行させる著者の筆致の巧みさに惹き付けられる。2018/11/06
はる
10
スペインの沈黙…スペインのギターを聴くと、と言ってもパコ・デ・ルシアくらいしか知らないのだけれど。フラメンコギター曲は情熱的で燃え上がるような激情だと、思ってしまう。数頁のこの章で激情は明るいとは無関係な未分明な人間的情念で受身な暗い、負荷だと言う。ゴヤの得体知れなさは、スペインの黙して語らない負荷を描いている。そんなゴヤに引き寄せられたスペイン暮しの断片章。→2023/12/06
あかつや
9
ゴヤの評伝を書いた作家が見たスペイン。色んな所に出した文章をまとめたものなので1冊の本としてそんなに出来の良いものじゃないけど、堀田善衛らしいものの見方が面白かった。特にグラナダ滞在記が好きだな。自分もそこに住んでみたくなる。さすがに現在はだいぶ変わってるんだろうけども。世界を知るためには自国の歴史を知り、相手国の歴史もよく勉強して、「その上で、何をどう見るか」。「文化、文明に生粋なものなどはありえない」。奈良へ行ってそこで「純粋な日本」な日本を見るのはバカ野郎だと。なるほどたしかにそうだなあと感心した。2022/07/04
belier
6
ゴヤの絵が大好きになり、その人生にも興味を抱いて、堀田の『ゴヤ』を読んだのもずっと昔のことになった。その後、プロドで実際に名画たちを鑑賞できたが、堀田がゴヤについて書いている文章を読むのは久しぶり。『ゴヤ』は、本棚のいつでも取り出せるところに置いているにも関わらず。やはり、堀田はゴヤとスペインについて書いている文章が最高だ。陳腐な言い方になるが、二人とも人生の酸いも甘いも嚙み分けた人物だからなのだろう。生きているうちに『ゴヤ』4冊を読み返さねば、とあらためて思った。2024/03/31
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