内容説明
ほとんど無名のうちに夭折しながらも後年、三島由紀夫をして「デカダンスの詩と古典の端正との結合、熱つぽい額と冷たい檸檬との絶妙な取り合はせであつて、その肉感的な理知の結晶ともいふべき作品は、いつまでも新鮮さを保ち、おそらく現代の粗雑な小説の中に置いたら、その新しさと高貴によつて、ほかの現代文学を忽ち古ぼけた情けないものに見せるであらう」と云わしめた梶井基次郎の全集。難解な語句には注を付し、すべての作品はもとよりの習作・遺稿までを網羅した全一巻。
目次
檸檬
城のある町にて
泥濘
路上
椽の花
過古
雪後
ある心の風景
Kの昇天
冬の日
蒼穹
筧の話
器楽的幻覚
冬の蠅
ある崖上の感情
桜の樹の下には
愛撫
闇の絵巻
交尾
のんきな患者
詩二つ
小さき良心
不幸
卑怯者
大蒜
彷徨
裸像を盗む男
鼠
カッフェー・ラーヴェン
母親
奎吉
矛盾の様な真実
瀬戸内海の夜
帰宅前後
太郎と街
瀬山の話
夕凪橋の狸
貧しい生活より
犬を売る露店
冬の日
汽車 その他
凧
河岸 一幕
攀じ登る男 一幕
栗鼠は籠にはいっている
闇の書
夕焼雲
奇妙な手品師
猫
琴を持った乞食と舞踏人形
海
薬
交尾
雲
籔熊亭
温泉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
テル35
73
「器楽的幻覚」フランスの若いピアニストの6夜連続演奏会にて。「演奏者の白い十本の指があるときは泡を噛んで進んでいく波頭のように、あるときはじゃれ合っている家畜のように鍵盤に挑みかかっていた。それが時々、演奏者の意思からも鳴り響いている音楽からも遊離して動いているように感じられた」梶井は音が心に入る瞬間を映像化して、さらに文章として書き込む。聴覚と視覚が一体であったフィルムが、視覚(=脳)と聴覚(=脳)に分離するわずかな揺れ動き、意識の最下部に到達する揺らぎを掬い取り、逃さずことばに換えていく。2025/11/09
テル35
72
「死後に評価が飛躍的に高まった夭折の天才」ということになっている。死後、評価されたといえば、ゴッホ、モディリアニのような人たちもいる。小林秀雄は「この小説の味ひには何等頽廃衰弱を思わせるものがない。切迫した心情が童話の様な生々とした風味をたたえてゐる」と言い当て、横光利一は「真にたくましい文学」と評した。しかし、他者からの評価より前に梶井自身が「視ること、それはもう「なにか」なのだ。自分の魂の一部分あるいは全部がそれに乗り移ることなのだ」と語っており、感性の受容から「幸せな確信」に到達していたことがわかる2026/02/08
優希
72
美しくも儚げな空気が流れている短編集。殆どの作品が初めて読む作品で、世界観に引き込まれずにはいられませんでした。『桜の樹の下には』の出だしが好きすぎてたまりません。遺稿が多いので、この話はどう終わるのか想像するのも楽しかったです。2020/04/08
優希
53
儚くて美しい短編の宝庫だと思います。研ぎ澄まされた感情が伝わってくるようでした。2022/01/12
優希
41
研ぎ澄まされた感性で描かれる世界に引き込まれます。2022/10/01




