角川文庫<br> 白夜

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角川文庫
白夜

  • ISBN:9784042087021

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内容説明

ドストエフスキーには過酷な眼で人間性の本性を凝視する一方、感傷的夢想家の一面がある。ペテルブルクに住む貧しいインテリ青年の孤独と空想の生活に、白夜の神秘に包まれたひとりの少女が姿を現わし夢のような淡い恋心が芽生え始める頃、この幻はもろくもくずれ去ってしまう。一八四八年に発表の愛すべき短編である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

takaichiro

129
貧しいインテリ青年が空想する淡い恋物語。神秘的な白夜のペテルブルク。夢を描いた少女と出会い、恋に落ち、生涯の運命を約束する。二人の愛が最高潮に達した瞬間に幻影は崩れ去り、街角に消える。二人の恋、気持ちの高ぶりを共感しながら、最後は主人公と共に夢から現実に引き戻される。淡い夢から目覚めた時のやり場のない虚しさ、余韻。時間の経過に従い懐かしさと共に整理・記憶されていく様々な思い出。説教じみた大作で有名なドストエフスキー。本作ではデリケートな愛情を持った詩人としての一面を見せる。ペテルブルグ、行ってみたい。2020/02/14

新地学@児童書病発動中

127
ドストエフスキーにはめずらしい、甘い抒情的な失恋物語。主人公の青年と美しい少女が瞬間的に心を通わせて、その気持ちがもろく崩れ去っていくところが読み手の心に物悲しい感情を呼び起こす。後期の人間の心の暗部まで足を踏み入れた作品を書く前に、ドストエフスキーがこのような物語を作り上げていたことが興味深い。この叙情性を土台にしていたからこそ、『罪と罰』や『白痴』のような多くの人にアピールできる小説を書けたのかもしれない。2015/04/12

青蓮

109
読メでオススメされて読みました。モスクワへ行った恋人の帰りを待つナースチェンカと空想家の貧しいインテリ青年との淡い恋の物語。この作品はドストエフスキーが持つ「毒」は薄めで、内容も短いので、初めて読む人にも比較的読みやすい作品だと思います。結末はなんとなく予想できましたが、単純にナースチェンカが狡いと言うか酷い。でも恋愛において、こう言ったことは良くあることなのかなと思うと切ないです。フラレた青年が酷く哀れ。「ああ、幸福な人間というものは、時によるとなんてやりきれないものなんだろう!」2016/03/03

(C17H26O4)

87
白夜のせいにするのがきっといい。孤独な青年の恋の夢は白夜がみせた幻想なのだと。彼の饒舌さも、彼女の言葉に舞い上がる心も。だってナースチェンカの恋の夢は現実なのだ。「あたしはあなたの愛に価する女ですもの、その愛に報いることのできる女ですもの…ああ、あなたはわたしの親友です」「どうぞお忘れにならずに、いつまでも愛していてくださるように、あなたのナースチェンカを」 2019/12/27

のっち♬

85
孤独な夢想家の青年が白夜に出会った少女に恋をする。婚約者が迎えに来ないという彼女に同情心を寄せながら夢や人生について長広舌をふるう様に、著者の感傷的夢想家としての一面がよく現れており、その行き過ぎた理想主義は物語に滑稽さを齎している。古今東西で使い古された筋ながら、巧みに悲劇へ転化させていく様に著者の手腕が光る。「なにもかも言って」くるにも関わらず謎に満ちたヒロインの神秘性も程よく、幻想的な余韻を残す。「ああ!至上の法悦の完全なひととき!人間の長い人生に比べてすら、それは決して不足のない一瞬ではないか?」2018/04/30

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