内容説明
田中麗奈、東山紀之主演映画『山桜』の原作を収録。とり返しのつかない回り道をしてしまった――若くして不幸な結婚を二度経験した野江。一度目は夫に死なれ、二度目の夫は、野江を出戻りの嫁と蔑んでいる。しかし二度も失敗することなどできず、耐え忍ぶ日々を送っていた。そんなある日、山桜をひと枝折ろうと、爪先立って手をのばす野江の頭上から、不意に男の声がした。「手折って進ぜよう」――薄紅いろの山桜の下、たった一度出会ったその男は……「山桜」をはじめ、全11作品を収録した時代小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
485
【海坂藩城下町 第6回読書の集い「冬」】暗い、クライ、くらいのである。そのくせ、各短編における「起承転結」の展開がお見事なのである。むしろ「結」の部分は端折って、読者に丸投げ、あとは自分で考えてね〜とその場に取り残されることになるのである。寂しい、とっても寂しい…でもクセになる。この時期に読めてよかった。2021/01/25
yoshida
166
11編の短編からなる短編集。共通するのは男女の心の陰影。やるせない作品が中心。そんな中、「山桜」が読了感が爽やかで印象深かったです。「山桜」では浦井家の娘の野江が、回り道をしながら幸せに辿り着く迄を描く。夫が急逝した野江は手塚弥一郎との縁談と、磯村の縁談が来る。手塚が剣の遣い手なため粗暴な気がし、磯村の家へ嫁ぐ野江。野江を待っていたのは、野江を出戻りと扱う夫と異様な家風だった。手塚と野江の邂逅。手塚の刃傷沙汰。手塚を嘲る磯村。野江は離縁し手塚の家を訪れる。人は添わねば分からない。現代も共通して言える哀切。2016/10/01
ふじさん
107
この短編集で好きなのは、「滴る汗」、「幼い声」、「亭主の仲間」、「時雨みち」。人生はやり直しがきかず、今の避けようもない現実を受け止め生きるしかない。この何とも言えないやるせなさ、男女の心の陰影や葛藤が端正な文体で描かれていて心惹かれる。また、映画にもなった「山桜」、男女の思い通りに行かない人生を巧みに描いて良かった。藤沢周平の作品の映画化としては、許せる内容で見る価値あり。 2021/09/09
じいじ
102
俄かに読み返したくなった、藤沢周平の【山桜】。7年ぶり、たった22頁の短篇なのだが、やっぱり期待どおりです。親の決めた二度の結婚が不運なことになっても、ひた向きに生きる女性・野江が健気で素敵です。三度目の正直か、ようやく訪れそうな幸せが垣間見えるラストが堪らなく良いです。何度でも読み返したい短篇集です。2021/11/14
タイ子
95
藤沢作品、何冊読もうといいものは飽きない、マンネリ化しない、その都度の感動が新鮮。11作の短編集。中でも「山桜」の儚げな、でも美しく咲く風景が目に浮かぶよう。と、思ったら2008年に映画化されてたんだ。読了後、ネットで映像を少し見ただけでジーンとくる。幸せへの遠回り人生、いいですね。ハッピーエンドで終らないのが多い藤沢作品の中でたまに良かったねぇって主人公に言ってあげたくなるのがあってこれもその一つ。「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」これらの続きは想像に任せる他ない。これが藤沢作品の真骨頂なのだから。2022/07/31
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