内容説明
政夫と民子は仲の良いいとこ同士だが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。しかし民子が年上であるために、ふたりの思いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。野菊繁る墓前にくずおれる政夫……。涙なしには読めない「野菊の墓」、ほか三作を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
114
明治の純情恋愛物語。学生時代に読んで以来。だが、新鮮な感動は今も蘇る。単純素朴な物語であるゆえに、⒘歳の民子と15歳の政夫の実らぬ恋が純粋な形で読み手に伝わって来る。作者は正岡子規のホトトギス散文会の集まりで本作を読みつつ発表したときに感極まって大泣きしたそうだが、その気持ちは分からないでもない、と思う。この時代の「口語」の叙述文は不思議な感覚を齎し、興味深い。短編だが永遠の青春文学の一つだろう。2024/09/28
ゴンゾウ@新潮部
111
映画化もされ有名な表題作。政夫と民子のやりとりがとても純粋で清潔に描かれているのでふたりに降りかかる苛酷な運命がより際立っている。文章は決して洗練されておらず荒削りだが、農村の素朴な風景描写には合っていると思う。2017/06/11
takaC
109
たった100ページと侮るなかれ。現代小説のように1時間では読み終えられません。2013/07/19
ちくわ
102
思春期の純愛を描いており、懐かしさもあれど、二度と戻れない切なさの方が胸に突き刺さる。自分が幼少の頃も人前でいちゃつくのは憚られた。なのでこっそりデートをする。勿論大変だったが、逆にそれがお互いを高揚させるトリガーだった気もする。ふと思ったが、恋人同士の気持ちの伝え方も随分様変わりしてるよね。大昔:手紙や面と向かって→昔:固定電話→ちょい昔:携帯→今:SNS?→近未来:ダイレクトに脳波を送受信? そんな時代になったら民子のように人を愛せるのだろうか?と不安を覚えるが、それは時代遅れな自分の杞憂なんだろね。2025/12/02
読特
100
連れても逃げず、ついても行かず、少年は学校に発ち、女性が見送る。それが生涯の別れとなる。矢切の渡しの松戸側。歩いて20分先にある文学碑。時は明治。女の方が年が上。それだけで禁断の恋になる。引き裂かれ、却って募る想い。二人歩いた道に咲いた花。採って、渡して、喜んで。彼女に喩えたその花が、永久の住家に繁っている。日本に野生の菊はない。よく似た花なら咲いている。幽明遥けく隔つとも1日たりとも去ることのできない心。…数えきれない映像化。時代を超えてに読み継がれてきた物語。捌けてしまう今になってこそ純な愛を求める。2025/10/17




