新潮文庫<br> 死者の奢り・飼育

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新潮文庫
死者の奢り・飼育

  • 著者名:大江健三郎【著】
  • 価格 ¥605(本体¥550)
  • 新潮社(2014/03発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101126012

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内容説明

死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた「人間の羊」など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

354
表題作『飼育』は1958年上半期芥川賞受賞作。鮮烈な抒情が作品の全編を覆う。かつて、これほどに衝撃的な作品があっただろうか。これこそが「我らの時代の文学」だと確信した。大江と同時代を生きることの幸福を思ったのだ。世代は親子ほどにも違うのだが、それでも強い共感性を持って読むことのできる文学がここにあった。少年であることの震え、再び還ることのない(本当はそうではないのだが)無垢がここにはあった。僕たちはもはやそこには還れない。強烈な渇仰と郷愁がそこにはあったのだ。僕たちは大江と共に何かを失くしてしまった。2013/06/06

absinthe

227
『飼育』悲しい。人は羊の皮を被った狼なのか。あの無残な結末は人間が互いを野獣と認識していたからなのか。あの黒人には兵士としての側面と子供たちと楽しく交流していた両面があったはず。『死者の…』死体洗いのアルバイトの様子に関する都市伝説の元ネタと言われる話だが。人間が生まれて死ぬというサイクルを、ふと傍観すると突然に陥る虚無感。表題作以外も面白かった。『他人の足』どこかエロい話でもある。『人間の羊』壮絶な話。目をそむけたくなる。モーパッサンの『脂肪の塊』を思い出す。2021/11/25

遥かなる想い

205
大江健三郎の初期の作品。「飼育」は正直怖かった。黒人兵と寒村の子供たちの閉ざされた状況におびえていた。大江健三郎にしては、普通の読める小説集で、それが不思議に感じていた。監禁されている状態、閉ざされた壁の中で生きる状態をうまく描いている。2010/06/19

まふ

136
追悼で読んだ久しぶりの大江をまた読む。初期の6篇の短編集。どれも懐かしく面白かった。「死者の奢り」をほぼ60年前に読んだときは驚いたが、今でも匂い立つ(?)ほどよく書けていて上手い。「飼育」四国の山奥に墜落した米軍の黒人捕虜が少年を捕虜にされ、それを鉈で殺して救う。これはすごかった。「不意の啞」山間の村に来た進駐軍の通訳の靴が消え、部落の責任者の父が銃で撃たれて死ぬ。その夜通訳が川で溺れて死ぬ。他に「戦いの今日」。進駐軍と四国山間僻地民との邂逅的設定が大江の物語をひときわユニークにしていると改めて思った。2023/04/13

yumimiy

127
ヒジョーに読みづらいのに面白い。例えて言うなら苦痛を伴う痒みをボリボリ掻いたら気持ちいいみたいな。大江健三郎初読みだが本書を選んで本当にラッキーだった。でも、短編集だから読み切れたんだと思う。6話すべてに共通しているのは奇妙な感覚、異質な感覚、無機質な感覚で1話1話読むごとに非日常体験ができる。個人的お気に入りは「他人の足」だ。脊椎カリエス患者の療養所の未成年病棟、粘液質の厚い壁の中、そこは快楽に満ちた場所だったが、外部から一人の大学生が入院したことによって空気が変化してゆく。オチが素晴らしく残酷だった。2022/03/02

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