内容説明
中堅商社のマニラ事務所長小寺は本社の要請で未経験のラワン材取引きに手を染めた。しかし現地の人々との信頼の上にビジネスを進めようとする彼の前に、厳しい現実が次々とたちはだかってくる……。炎熱の地で困難な国際ビジネスに情熱を燃やす男たち。しかもそこは戦争の傷跡を色濃く残す地であった。第二次大戦当時の日本軍とフィリッピン人との関わり合いを一方に、現代の国際商戦をもう一方に置いて語る巧みな展開と、壮大なスケールで描きあげられた直木賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
117
直木賞】戦争中から戦後のフィリピンに、母が日本人、父がフィリピン人の主人公の生活。戦争中は日本軍の親身になってくれる人との交流。戦後は、日本の会社とフィリピンの会社の梯。いやな思いもするが、楽しいこともいろいろ。日本から来た会社員が、お腹を壊す。中古車を買えば、タイヤが外れる。運転者が点検する義務があることを忘れてはいけない。2014/06/07
ehirano1
82
物語の進行と断続的なフランクの回想が繰り返されながら話が進みます。きっとこれらは何かを示唆する「対」になっているはずだとは思います。小寺所長と馬場大尉、鶴井と大日本帝国の(カス)参謀くらいは流石に分かるのですが、(容易過ぎるので)これだけではないような示唆が含まれているのではないかと。読み解けるか、当方!2017/10/21
ehirano1
71
物語の進行を楽しみながら戦前から戦後のフィリピンについて学べます。なんか得した気分です。2018/02/10
まつうら
24
中堅商社の鴻田貿易マニラ支店が、ラワン材輸出ビジネスで成長していくストーリーを縦軸に、フィリピンに生きる日本人の生き様を描く。 前半はルソン材の取引が中心だが、日本とフィリピンのハーフであるフランクが語る、戦時中の回想シーンが興味深い。太平洋戦争で憲兵隊の馬場大尉がやってくるが、この人物は石原莞爾の薫陶を受けた立派な軍人で、この人なら大東亜共栄圏を成し遂げられたと思わせる。レイテ湾作戦後のアメリカ再上陸で、馬場は戦死してしまうが、とても尊敬していただけに、当時のフランク少年は失意に陥る。(下巻に続く)2021/12/29
おさむ
16
87回直木賞受賞作。フィリピンが舞台といえば、船戸与一の「虹の谷の5月」を思い出すが、それよりもやや古く、時代は終戦から四半世紀たった1970年。現在のビジネスに、戦時中の日本とフィリピンの関係が重なり合い、物語は進んでいく。フィリピンという国の持つ奥深さ、多様性を知ることができる良作。下巻にも期待。2014/01/03