内容説明
明治中期、北海道・樺戸集治監に赴任した薩摩出身の有馬四郎助を中心に展開される数奇な人間模様。時の政府高官はもとより、若き日の幸田露伴、山本五十六の実兄・高野襄、与力上りのクリスチャンで監獄教誨師の原胤昭、元からす組の細谷十太夫、独休庵(ドク・ホリデイ)と称する酔っぱらい医者、加えて秩父困民党、加波山事件や静岡事件、佐賀の乱の残党たちがクロスする意外性こそ著者の明治物の大きな特色。アメリカ西部劇を思わせるスケールの大きさも魅力である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
28
『幻燈辻馬車』の三島通庸に代わる悪役は、「山県、金子と同類の-それにまさるとも劣らぬ鬼官僚」(露伴談)の初代北海道庁長官・岩村通俊の弟で石川県令の高俊と、遅れてきた剣豪・騎西。西部劇、脱獄もの、戦争もの、映画へのオマージュが出て来る。男を砂漠ならぬ極北の地まで追って来て、裸足になる女性は『モロッコ』(「凍姦刑」)。騎西の企みにより、憎みあう者どうしをわざと連鎖で繋ぐ『手錠のままの脱獄』もある(「煉獄脱管届」)。『リバティ・バランスを撃った男』が元ネタと思われる「西郷を撃った男」。2003/09/25
出世八五郎
15
明治物。シベリア送りのロシア人のように、開化直後の北海道では囚人が現地開発に使役されていた。その過酷な状況ゆえに有馬四郎助は愛の典獄と呼ばれる人物になったのだろう。幕末大西郷による旗本挑発に奔走した益満休之助の親族で、これと言った歴史人物ではない有馬四郎助を主人公とした著者の知識の豊富さに端倪すべからざるを云々・・・2020/06/12
さっと
7
明治はじめの人跡未踏に近い石狩平野にあった「地の果ての獄」樺戸集治監や空知集治監を舞台に、それぞれの看守または囚人あるいは看守&囚人あいまみえての愛憎劇の短編読切に様々な史上の人物が顔を見せるという趣向だったものが、最後は明治新政府高官をも巻き込んでの大騒動に発展しながらも、やがて大団円を迎える…。読者同様、こんな奇妙奇天烈な体験をした有馬四郎助青年看守の、その後の略年譜(史実)を見てわれわれは胸をなでおろすだろう。「免囚保護の父といわれる原篤胤とならんで、有馬は後まで「愛の典獄」と呼ばれる」。2018/10/07
isaribi11
2
山田風太郎にしてはチョット雑。牢屋小僧がまさかの聖人化。これには幻燈辻馬車の二段階呼び出し幽霊もビックリだ。2018/04/20
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