内容説明
戦後の荒廃と混乱の中で、資力もバックも、信用もないが、先見性と野武士的勇断を武器に、新しい世界に切り込んでいった男の集団。幾多の試練を持前の精神力と不可能を可能にする不撓不屈のバイタリティで克服し、ついに日本有数の旅行業社にまで発展させた男の野望と情熱を活写する実録企業小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
128
ナツイチ 2017 近畿日本ツーリストの社史を文庫にした作品。旅行代理店で修学旅行といえば高校の修学旅行も代理店経由で北海道に行った記憶があります。たしか代理店の札をカバンにつけた記憶がうっすら残っているので…。社旗をかざして新選組気取りで京の町を闊歩する姿を想像すると思わず吹き出しそうになりました。 ただ、やみくもに営業所を広げたりコンピューターを導入するのは無謀すぎる作戦だったのかも?ハードを充実させてもソフトの人間を育てないと会社はダメになるという見本です。2020/06/15
扉のこちら側
81
2018年189冊め。戦後復興期における日本ツーリスト(現近畿日本ツーリスト)の勃興は、まさしく作中で言うところの野武士たちの荒ぶる活躍だった。手に取った時はタイトルから鉄道ミステリかと思っていたのだが、面接に来た人がその場で採用になり、ただちにあの電車に乗れ!と仕事に駆り出されたエピソードから。たった5人で始めた仕事もここまで大きくできるものなのだな。2018/06/18
ぶんこ
53
夢や野望が有り、やっていて面白くてやりがいを感じていたら、この話は成功譚。しかし面白いと思えず、ただ働かされていると思うなら、立派なブラック企業。今の時代に読むと複雑な思いです。特に馬場さんの奥様が京都へ1ヶ月間行かされた話は辛かったです。妻の立場からの馬場さんは尊敬できる夫のだったのでしょうか? 私には無理。幸子さんの大らかさに脱帽。図書館書庫に眠っていた本でした。2016/07/10
糜竺(びじく)
52
旅行業者の近畿日本ツーリストの創業から発展へと描かれた企業小説です。昭和23年に5人で発足した当時からの歴史を、社長として活躍した馬場勇を中心にたどった内容となっています。初期の頃の、目まぐるしい忙しさ、過酷さ、泥臭さは非常にハンパなかったです。今の時代なら、もろにブラック企業と言える位の大変さです。しかし、当時としてはそれが普通だったのかもしれません。とにかく、私的には刺激的かつ衝撃的な働きぶりでした。今の日本の発展もこういった高度経済成長時代の人々の働きに負う所が大きいと実感させられる一冊でした。2016/10/15
まつうら
33
近畿日本ツーリストは近鉄系の会社だとしか思っていなかったが、前身の会社を率いたアツい野武士たちがいたことは知らなかった。馬場勇のやり方はブラックカンパニーと言われかねないが、奉公人が家族総出で新興の店舗を盛り立ることで、戦後の時代を切り開いてきた。 その後、近鉄の佐伯勇の知遇を得て近畿日本ツーリストとなり、野武士は経営者として成長していく。目を見張るのは、銀行がようやく第1次オンラインだと言っていた時代に、全営業店のオンライン化を推進したこと。時代の先を読む馬場の慧眼は、とてもすばらしい!2021/10/17