内容説明
ひっそりと咲く高山植物のように気高く拒絶的な美貌を持つ少女・恭子。彼女を担任してから、私は完全にその魅力に取り憑かれてしまった……。陰気で孤高なところがある恭子は、派手好きなクラスの女生徒たちの反感を買い、たびたび悲惨な私刑(リンチ)を受けた。その恭子がある日、「先生、今度の遠足に行かないで!」と、私に執拗に懇願した。不審に思いながらも、結局遠足に付き添った私は、そこで恐ろしい事件に遭遇し……!?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アヴィ
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森村誠一初期の傑作短編集。魔性に取り憑かれたり、魔性に取り込まれたり、自ら魔性を身に着けようとしたりする人間の弱さや浅はかさをミステリアスに描く。どうしても魔に成り切れない獣の償いや、魔から抜け出したように見えて、別な魔に取り憑かれた鉄筋の猿類など、人間の哀しい本性を書かせると、森村誠一はとても巧妙い。全編基本的に陰鬱な感じだが、掌編とでもいうべき最も短い途中下車、人生に力尽きた男が自殺の前に同窓会に出ようと途中下車する話だが、唯一ハッピーエンド、というかハッピーを臭わせて終わるこの話がとても胸を打つ。2025/11/28




