内容説明
徹底して不寛容を批判した仏文学者、渡辺一夫。繊細かつ強靭なヒューマニズムの精神が現代に甦る。表題作を含め、精選した全17篇の随筆を収録。
目次
非力について
思想の役目について
カトリシスムと僕
狂気について
不幸について
文法学者も戦争を呪詛し得ることについて
人間が機械になることは避けられないものであろうか?
自由について
寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか
新卒業生の一人への手紙
立ちどころに太陽は消えるであろう
老醜談義
いわゆる教養は無力であるか?
文運隆盛時と大学文学部
平和の苦しさ
悲しく卑しい智慧
偽善の勧め
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
14
渡辺一夫の随筆集。タイトルにある「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」というのは、口先だけで多様性や寛容さを尊びながら、自分たちと相容れない人間を徹底的に批判し糾弾するような最近よく見かける団体を思い浮かべてしまう。戦中戦後の知識人にありがちな左寄りすぎる感覚なので(当時はスタンダードだったのだろうけれど)全体を通しての彼の主義主張の根底にある思想を丸ごと賛美しようとは思わないけれど、高い知性から生み出される思考の数々は読んでいるだけで刺激を受ける。2022/08/15
Viola
3
早口じゃ言えないタイトルですな。伊坂幸太郎の『死神の浮力』を読んだことがある人はピンとくるはずの、渡辺一夫随筆集です。おべんきょうになりました! ごめんなさい正直そんなに理解できなかった。この人は日本があんまり好きじゃなかったんだろうなと思いました。以上。2020/02/21
mori-ful
1
「文法学者も戦争を呪詛し得ることについて」が目当て。文法学者クリストフ・ニーロップ。戦後から60年代くらいまでの文章。宗教戦争でのユマニストたちの思想は古いようで今も新しい。戦後まもなくのサルトルの言葉が繰り返し引用されている。人間であることに倫理的な含みが齎されている。「老獪談義」などユーモアも。文体が面白い。2024/04/23
HH
0
「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」 窮鼠が成長したら猛虎になるかもしれないからである。追いつめられ続けた人間が、どれほど猜疑心に駆られ、やさしい心根を失うか...。 「文学隆盛時と大学文学部」 現在の人間が、技術万能主義によって洗脳し尽された結果、つまり完全な人間改造が行われる時がくるまで...文学というものは、人々によって求められ、人々の心に宿り続けるものであるような気がします。また、本質的には、文学は、名利と無関係であって、ただ人間の心に入っているひびや、2023/11/03
劣リーマン(備忘録)
0
「偽善の勧め」目当てで購入、素晴らしい本なのは始めから解っていたことだが果たしてその通りで、これは出版した三田産業の手柄(欲を言えば、エピグラフや附記の省略はやや残念)。★★★★★。「それは人間であることと何の関係があるか?」の自己客観は倫理の基礎に置くべき至言で、為政者には是非心に留めて欲しいものだが、彼(ら)にこの文章の意味を読み取る知性がないだろうことは明白。本書の(少なくとも本書を手に取るセンスはある読者の書いた)感想に「筆者は日本が嫌いなのだろう(大意)」というものがあったのも「然もありなん」。2020/03/03
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