内容説明
銃弾を胸に撃ち込んで、自らの人生に“予定された”終止符を打ったダダイストにして、美貌のダンディ、ジャック・リゴー。二〇〇七年当社刊『自殺総代理店』の約3倍に上るテクストを完訳、数々の貴重な証言、詳細な年譜、関連写真29点を付した決定版。ルイ・マルの映画『鬼火』のモデルとなったジャック・リゴーの実像に迫る本邦初の完訳版。
目次
若年期の発表作品及び未発表原稿(無気力な話;彼の子供時代は…;希望 ほか)
没後刊行収録作品(自殺総代理店;求職;三面記事 ほか)
遺稿断片―アフォリズム集
証言集(ロベール・デスノス;ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル;ジャック・ポレル ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
世界神経症
3
ほとんどが出版を意図しない文章なので、つまらないといえばつまらない。ただ、彼の倦怠は、まさにそうしたつまらなさの中に潜んでいる。彼には鏡のモチーフがある。これは彼にとって自らのアイデンティティを喚起するという解釈がある(この時代らしさを感じる気もする)。だが、彼はその向こうへと突破しようとする。即ち、アイデンティティからの没落を試みる。しかし、彼はガラス(鏡)を割ることしかできない。その先には常に新しいガラスがあるのだ。 彼は恐らく自由意志どころか「自由意志感」もなかった人間だったのだろう。2022/04/08
東京湾
0
存在の否定、人生への冷笑、死への渇望。 齢30にして"周到に予定された自殺"を遂げたダダイスト、ジャック・リゴーの生前発表稿、遺稿、及び証言録を集成。リゴーのペシミスティックな肖像が、合わせ鏡のように幾重にも浮かび上がって見える深淵なる文集だ。2022/06/22
PukaPuka
0
読んで楽しい本ではないが、こういう出自の人がこうなってしまう、という一つの人生行路を辿る面白さはある。2021/12/13
∃.狂茶党
0
自殺を企て実行に至る。この行為の純化を辿るような書物。 多くの言葉が破棄されており、ある意味、自殺者が意図的残した文章からは、ナルシズムと、なんとも言い難い残酷さ、冷え切った情熱(鬼火だ)が感じられる。 世界に対するある種の諦めを共有する人でなければ、これらの気取った戯言は意味をなさないのではないか。 不平等が強靭な意思を支える。 憧れることを拒む姿勢と、そのことに、完成することに対する美意識。ダダイストの死が、言葉にされない社会的不穏の、断面になる。 2021/09/05