著者等紹介
芝木好子[シバキヨシコ]
1914年東京都生まれ。1941年に『青果の市』で第14回芥川龍之介賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
89
青い装幀の本を購入。表紙は桜の花。書肆汽水域の新刊。内容は『新しい日々』『脚光』『白萩』『晩秋』『冬の梅』『遠い青春』『老妓の涙』『十九歳』の8篇。滋味深いという形容通りの味わい深い物語。昭和の時代の女性の抑えられた情感と花の描写が、淡々とした文章ゆえに心に響く。17年振りにパリで出会う洋子へ絵と共に「友へ。描かなかった裸婦」とメモを渡す桂の『晩秋』が一番印象に残る。表題『新しい日々』の百合の決断もいい。独立系書店主の感想を納めたパンフも嬉しい。贅沢な小冊子。https://kisuiiki.com/2022/04/27
ルカ
56
密やかな思いを秘めた女性が登場する8篇からなる短篇集。 芝木好子さんの作品を初めて読んだが、一つ読み終える毎にじわじわと良さが染みてくる。景色に心情がうまく溶け込み、品があり味わい深い。 この小説集に出会えたことに感謝。他作品も是非読みたい。2022/11/22
天の川
52
端正な小説集だった。昭和40年代くらいの社会は高度経済成長に浮かれつつも、人々にまだ戦争中の記憶や戦前の規範意識が残っている。8編の女性達も又、社会の枠組みの中で端然と生活している。心の中は揺らぎながらも流されることなく、少しの孤独を道連れにして。いずれも心に残る。ネット購入で届いたのは書影と同じ装幀。装幀は4種。紺色の箱が良かったなぁ…。でも、花脈が浮き出て朽ちようとしている花の写真のこの本も素敵。特装版は志村ふくみさんのアトリエの草木染だとか。挟まれていた8人の本屋さんの解説のリーフレットも良かった。2023/01/04
ぶんこ
46
2〜30代に集中して読んだ芝木作品の女性たちの印象が凝り固まって残っていたからか、少しイメージが違うのに驚きました。意外とたくましい女性たち。「奥につよさを隠し持った、控えめで手仕事に一生懸命励む人」との印象に少し似ていると思ったのは「遠い青春」の若子さんでした。こうして厳選された短編集を読むと、若かった頃の自分の好みが偏っていたのだと驚かされました。絶賛の美しい装丁は、図書館本なので外箱が無く、そこだけが残念。篠原紙工の「長い物語の始まり」に、この本のできた経緯と写真が素晴らしかったです。2023/01/22
あつ子🐈⬛
16
初読みの作家さんです。とても良かった!一番好きなのは『脚光』。大好きな中島京子さんの『小さいおうち』を彷彿させる(芝木さんの方が先ですが) 一番ドキドキしたのは『白萩』。女は幻と知りながら、それを愛してしまう生き物なのかもしれません。 かなり昔の作品なのに、やるせないことどもに揺れる女心は現代にも通じます。文章のうまさも相まって、読んでいてとても心が震えました。 「他者に仮托したゆめの脆さを思った。」という言葉に、女に生まれたことの安堵と哀しみを思いました。 素晴らしい作品です。2021/08/11