内容説明
インド最大の少数民族「ゴンド族」の画家、バッジュ・シャームは、ロンドンのインド料理レストランに壁画を描く仕事の依頼を受け、はじめて故郷を離れる。遭遇するできごとすべてが森の住人バッジュの眼に不思議なものに映る。飛行機は空とぶ象に、地下鉄はミミズに、路線バスは犬に、ロンドンの象徴・ビッグベンは時を告げるニワトリに、英国紳士はコウモリの群れに…。大都会は、動物たちが暮らすジャングルに姿を変える…。『夜の木』『世界のはじまり』の作家バッジュ・シャームのデビュー作であり、インド・タラブックスにとっての記念碑的な作品。日本版はタラブックスの職人による手漉き紙&シルクスクリーン・プリントの表紙をつかったハンドメイド版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベル@bell-zou
21
タラ・ブックスに携わる前のバッジュ・シャームがレストランの壁画を手掛けるためロンドンへ旅をしたときのお話。日常に当たり前となって溶け込んだ風景も彼の素朴で冷静な眼差しに捉えられると謎に変わる。じぶんが乗る飛行機を見ることが出来ない。見上げるはずの雲を見下ろしていた衝撃。ロンドンではじぶんが外国人になっていた。間違いなく巡ってくれる30番のバス。私たちは沢山の奇跡の積み重ねで生活しているのだったと気付かされる。ロンドンへの出発、残していく全ての物にもう二度と会えない気がした理由をあとがきで知り切なくなる。↓2021/08/09
タカラ~ム
10
作品の内容よりも、まずこの本の造本に感動する。書店の店頭で手にとったときに思わず「おぉ!」と感嘆の声を漏らしてしまう。表紙の手触り、指にしっくりくるページの感覚。紙の本の素晴らしさを実感する。作品も素敵だ。バッジュ・シャームが描き出す絵はどれも印象深い。鮮やかな色を使った『ゴンド画』と呼ばれる作品たち。そこに表現されている作者の感受性の広さと深さ。手にとって楽しみたい、目で見て楽しみたい本です。2019/08/25
しばこ
9
少し前に訪れた「世界を変える美しい本」展で目にして気になっていて、書店で売っていたので購入。 インド・ゴンド族の作者がゴンド画と呼ばれる画法で、仕事で訪れたロンドンでの思い出を作品にした。独特の模様や表現方法が美しい。ナンバリングされていて、2000冊の中の一つを手にできたことも嬉しい。2019/08/31
UNI/るるるるん
4
飛行機に乗り、初めて海外へ行くバッジュ・シャームは、驚きと好奇心を素直にみずみずしく表し、ロンドンで彼の生まれ育った場所を慈しむように思い出す。 象、こうもり、犬、ミミズ。彼の目を通して見るロンドンは、土の香りがする。初めての旅の興奮と、ふりかえる故郷への愛情は、わたしにはとてもキュートに思えて、本を抱きしめたくなった。 電車に乗り込んだ子どもが「電車が見えない」と泣いた話を聞いたことがあるが、それが頭に浮かぶような一幕も。 今日のわたしの好みのページは「さかさまの世界」だ。明日はまた違うかもしれない。2019/07/19
かるた
1
ここまで自身の文化と違う環境に身をおいたとき、こんな風にしなやかに受け入れられるかなーと思った。自分の文化と結びつけて理解しようとする姿勢と発想力、また恐れ慄いたりせず、プライドを持って対峙してる姿がいいなと思う。卑屈にならないでいるのって、瞬発的な理解力がいるんだなと。2021/11/18