感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
121
30代半ばで突然に孤児となった男。1999年の3月24日。フランスとイタリアを結ぶモンブランのトンネル内の事故による火災で突然に両親を失う。その喪失はとても大きく、彼は静かに七転八倒する。離れた出来事を結びつけて、関係性や意味を見出そうとする。知ればより深く傷つく事まで試みる。最後に彼に寄り添ったのはボルヘス。彼の弔いの旅にボルヘスはともに赴く。私も苦しい時に文学に救いを求めることがあるから、そこにとても共感すると同時に、彼の苦しみの深さを見て、深淵から一緒に這い上がろうとのたうち回るような読書だった。2018/10/21
qoop
5
事故で両親を失った主人公が過ごす、内省的な喪の期間。弔いを出し、裁判に臨み、日常を送りながら、あの時以前と断絶された今を生きる主人公。事故後の日々を書く文章はフィルター越しに自分自身を見ているようで、ある種の浮遊感の如き感覚をうんでいる。心理的な防壁の存在を想像させ、それに包まれることで傷を減らし、同時に遮断された生活を送り続けるもどかしさを感じさせる。長い歳月を経て、紗幕が開くように喪が開けるその心情を淡々と書き、同時に鮮烈な印象を与える終盤が印象的。2018/07/21
chiro
4
突然、両親を事故で失った著者が死を受け入れ克服するまでの出来事が書かれている。 死の乗り越え方は人それぞれだが、彼の場合、詩人や作家たちの言葉、作品の中の文章によって、命を奪ったものに対する憎悪や疑問が解決し、気持ちの整理がついていく。 ゛さいごに ” のページには前を向いて人生を再出発していく著者の姿が見える様で思わず顔がほころんだ。2018/08/12