感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
120
家柄も資産も学歴もなく、勉強嫌いだが熱心な読書家、マザコンで好きな女性に告白できず、絵と音楽を愛する芸術家志望だが才能がないと自覚して苛立つ。初刊時に読んだ際は、現代日本でも珍しくない独善的な厨二病の青年と感じた。一番付き合うのが面倒なタイプだが、幸か不幸か何でも話を聞いてくれる友人を得た。彼に感情を吐き出したり建築や政治に関する構想を語るうちに、ヒトラーは自分が政治的指導者として理想を実現せねばと思い定めたのだ。クレオパトラの鼻ではないが、もしクビツェクに出会わなければ未来の独裁者は誕生しなかったろう。2023/12/21
テツ
26
ヒトラーの青春時代を間近で見ていた友人クビツェクによる回顧録。誰にでもあるような小さな恋や挫折。人類の歴史にその名を刻まれた独裁者だって僕たちと何ら変わることのない青春を生きていた。ヒトラーが特別邪悪な存在だというわけではなく人はきっと誰でもそうした環境に置かれてしまえば力に酔い時代に目を眩まされ暴走する。自分を律することは至難の技なんだろう。せめてクビツェクがずっとヒトラーの側にいたら少しは歴史も変わったのかな。戦後の戦勝国との取調べ会話に涙。「あなたは何故ヒトラーを暗殺しなかったのか」「友人だからさ」2018/01/12
ベル
6
【ナチス⑤】著者は青年ヒトラーの唯一の友人であり、独裁者の十代後半を知る無二の存在でした。本書の価値もまさにこの点にあります。つまり、当時のヒトラーを語れる人物が著者の他にいないのです。◆よって、数多あるヒトラーの伝記も、こと青春期に関しては、本回想録に準拠せざるを得ない。作家の作り出すヒトラー像は、本書無くしては語れないのです。◆ ならばと、私も自分なりのヒトラー像に挑んだのですが、却って混乱してしまいました。思索と行動のひと。家族愛と民族主義の青年。対象への執着心と行動の乖離……。メダパニ状態です。2016/01/12
札幌近現代史研究所(者。自称)
2
ヒトラーの青春期、ウィーン時代初期に関する貴重な証言や回想がもりだくさんのヒトラー研究には書かせぬ本。個人的には「マーラーとヒトラー」でも触れられていない、ヒトラーはマーラーの指揮した音楽を聴いたのかについて明確に「彼はユダヤ人だから駄目だというが、彼自身メンデルスゾーンの音楽に魅了されマーラーの指揮に感嘆したではないか」と明記されてあり長年の謎をも説いてくれたバランスの行き届いた好著。ヒトラーの友情への感謝(後にバイロイト音楽祭に招待してもらったりしている)はあるがその悪行を礼賛してはいない
nezumi
1
数年前に読み、えらくテンションが上がった感想を書いた記憶がある。読み返しさすがにモラル的な問題を感じ削除 この本から読み取れるヒトラーとは、悪の凡庸さとも言える。誰しも身に覚えがある思考の煮詰まりが時代に悲劇的にマッチしてしまった人、現代なら精々Twitterで目立つ程度の人だったのだろう。この本を読むにあたって、万が一にもヒトラーに陶酔的魅力を感じることはあってはならないと念を押して言っておく。それでも私がこの本に歴史的資料である事とはまた別の意味で、強烈に魅力を感じてしまうのは事実としてある
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