内容説明
「ソ連邦は今や存在しない」。「ゴルバチョフの悲劇は、民族のエネルギーに気づくのがあまりにも遅すぎたことだ」21世紀のソ連の未来を予言した大ベストセラーの完訳。
目次
第3部 連邦制度の終焉(「二重権力」;主権から独立へ;ロシア対ソ連)
第4部 帝国以後(連邦から〈共同の家〉へ;新しい民族―難民;民族と民主主義の対立か、それとも共存か)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
67
下巻はいよいよソ連解体が本格化する。先陣を切ったのがバルト三国で、これは第2次世界大戦当初のソ連とドイツの取引の中で併合されたため、そもそも連邦を自主的に構成したのではないという立場だった。その後各地の民族主義運動が連鎖するおそれの中で、民族への認識が甘いゴルバチョフが四苦八苦する様子がほぼリアルタイムで書かれている(1990年の著作)。連邦から「共同の家」への変化はドキュメンタリーのよう。もちろんその動きはグラスノスチの成果でもあり、ゴルバチョフが力尽くでの阻止をしなかったことは正当に評価される。2024/12/01
印度 洋一郎
8
下巻は、ソ連の民族問題ではトップランナーだったバルト三国の動きを中心に、ソ連の体制が形骸化していく過程を見る。人口では僅か600万人程度に過ぎないバルト三国は、経済力や人材の豊富さでソ連の中では群を抜いており、何よりも戦間期の約20年間に独立していた歴史的経験値もアドバンテージだった。環境、文化保護といった非政治分野の運動を「非公式組織」と当局に認めさせ、そこから拡大して広範囲な立場の人達を糾合する運動体である「人民戦線」方式の政治運動は、他の共和国の模範となった。ソ連が何故呆気なく崩壊したのかわかる。2023/03/27