内容説明
フランス第三共和政下の売春は、社会・経済構造の変化の影響下で、男たちの性的な感性も変化し、精液の排水溝ではなくなっていった。ブルジョワ風の家庭的親密さが広まり、ある種の性の粗略な扱われ方は次第に姿を消し、性関係に心情という粋な味つけが求められるようになった。娼婦の許へ足を向けることは、望ましくないが次善の策と考えられるようになり、この場合にも、相手との人間らしい出会いを大切にしながら性的渇きをいやそうとした。売春婦との関係においても、性交そのものよりもエロチスムが大きな意味をもつようになった。〈最古、永遠の職業〉と〈性的欲望〉の変容を追求した売春の社会史。
目次
第1章 規制主義による公娼制の計画と隔離された世界(規制主義の言説;規制主義の隔離された世界)
第2部 監禁から素行の監視へ(規制主義の計画の破綻、あるいは誘惑のイリュージョン;満たされぬ性と売春の供給;規制制度への批判)
第3部 新しい戦略の勝利(性病、誘拐、身体的退化―監視の必要;法制的無策と新規制主義の事実上の勝利;20世紀〈1914‐1978〉―ベルトコンベアー式色恋と身体の新しい管理構造)